エレクトロニクス製品サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2021 Hybrid」(以下、SEMICON Japan、2021年12月15〜17日、東京ビッグサイト)のオープニングキーノートでは、衆議院議員自由民主党の甘利明氏が「半導体強国復活に向けて」と題して講演した。
エレクトロニクス製品サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2021 Hybrid」(以下、SEMICON Japan、2021年12月15〜17日、東京ビッグサイト)のオープニングキーノートでは、衆議院議員自由民主党の甘利明氏が「半導体強国復活に向けて」と題して講演した。
半導体産業の中で、デバイスにおける日本の世界的シェアは低下しており、技術的にも遅れが目立つようになったと指摘されている。一方で製造装置や材料などの領域では高いシェアを持つ領域もまだ多く残されている。また、デバイスについてもDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中で、挽回の可能性もまだある状況だ。
DXは、アナログの領域が単純にデジタルに置き換わっていくことではなく、社会のさまざまな基盤がデジタル技術をベースとすることで、従来のやり方とは全く違った方法が生まれることになる。例えば、行政でも書面が従来の紙からデジタルドキュメント化するだけではなく、デジタル技術がベースとなり、他のシステムとの連携が自動的に行えることで、手続きのいくつかのステップを省略できたり、手続きそのものをなくしたりできることを示している。デジタル技術は基本的には半導体の上に成り立っており、DXの進展は半導体なしにはあり得ない。DXの進展とともに、その使用量は現在の数倍規模へと拡大すると予測されている。
こうした中で日本は国としてどのように半導体産業に向き合っていくべきなのだろうか。半導体戦略推進議員連盟会長の甘利氏は「経済安全保障がカギになる」と指摘している。
あらゆる産業でデジタル変革が生まれる中、それを支える半導体の確保がさまざまな産業そのものの発展に影響を与えることになる。加えて、これらの半導体を通じて行われるデータのやりとりの中、データの安全性や機器の安全性を確保していく仕組みを確保しなければならない。サイバー攻撃が国家レベルで行われたり、国際的なビジネス化してきたりする中で、経済安全保障、DX、半導体は三位一体だといえる。甘利氏は「半導体の進化の過程で日本の戦略としてどうしていくのかを議論していく必要がある。また、日本の半導体産業のミッシングリンクを完結し、輪がつながるようにしておくことが重要だ」と半導体産業の課題感について述べた。
その意味で大きな動きとなったのが、2021年11月に正式発表された台湾のファウンドリ大手TSMCの国内への工場誘致だ。ソニーセミコンダクタソリューションズやデンソーも出資し、熊本県に新たに2024年稼働予定で工場を建設する。この建設費用は8000億円を超えるが、この約半分を日本政府が補助をする。
TSMCが熊本で製造する半導体のレベルは22/28nm(ナノメートル)プロセスが中心だ。「この製造技術は約10年前の“枯れた”技術であり、その技術を国内に持ってきて作るだけでは日本として投資する意味はない。そこで、どのように半導体の進化につなげていくかが重要になる」と甘利氏は強調する。ソニーとの連携で「CMOSセンサーをどのようにインテリジェント化するか」や「高機能を持たせるのか」など、集めた情報をエッジ部分で処理するインテリジェントセンサーをどう作っていくかなどにつなげていく考えだ。
さらに「われわれは政治家として20ナノメートルレベルで終わらせるのではく、どうやって10ナノレベルやその以下のプロセスを国内に引き込んでいくかがこれからの課題となる」と甘利氏は述べる(その後、2022年2月にTSMCは12/16nmプロセスも熊本に用意することを発表)。「米国はTSMCの工場を呼び込んで、TSMCが実現している3nmプロセスの半導体を量産することを考えている。しかし、TSMCも最新の技術は外に出さないだろうと見ている。これは台湾を守ってもらうために、最先端の技術は台湾の中にあるということが、安全保障上の重要な役割を担うからだ」(甘利氏)。
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