特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

ダイキンと日立のW森田が語る、ニューノーマル時代のデジタルイノベーションモノづくり最前線レポート(1/2 ページ)

日立製作所の「Hitachi Social Innovation Forum 2021 JAPAN」のINDUSTRYビジネスセッションに、ダイキン工業 執行役員の森田重樹氏と日立 執行役常務の森田和信氏が登壇。「New Normal時代のデジタルイノベーションと持続可能な社会に向けた挑戦」をテーマに、自社の取り組みや今後の方向性を示した。

» 2021年12月24日 15時00分 公開
[長町基MONOist]

 日立製作所(以下、日立)がオンラインで開催したプライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2021 JAPAN」(2021年10月11〜15日)のINDUSTRYビジネスセッションに、ダイキン工業 執行役員 空調生産本部長 堺製作所長の森田重樹氏と日立 執行役常務 産業・流通ビジネスユニットCEOの森田和信氏が登壇。「New Normal時代のデジタルイノベーションと持続可能な社会に向けた挑戦」をテーマに、ダイキン工業と日立のW森田氏が対談を行い、それぞれ自社の取り組みや今後の方向性を示した。

経済価値に加えて環境価値と社会価値も企業の責務に

 コロナ禍によって社会や生活の在り方に大きな変化がもたらされる一方、デジタル技術の進展によって業界や組織の垣根を越えたオープンイノベーションが加速している。「New Normal時代」の変化の中で、デジタル革新や新たなビジネスモデルの創出によって、企業は経済や社会の発展にどう貢献していくべきかが問われている。また環境、レジリエンス、安心・安全といった普遍的な価値に貢献し、持続可能な社会を実現するために、企業が果たすべき役割についても大きな課題となってきた。

ダイキン工業の森田重樹氏 ダイキン工業の森田重樹氏

 ダイキン工業は5年ごとに中期戦略経営計画「Fusion」を立てており、2021年は2025年をターゲットとした「FUSION25」のスタートの年だが、森田重樹氏は「今までの戦略経営計画と大きく変わってきた点がある」と語る。これまで、目指す価値創造として経済価値(売り上げ、利益など)に重点を置いてきたが、これに環境価値、社会価値というテーマが新たに加わった。「これら2つの価値を創造し、高めていくことがこれからの企業の責務であり、求められる姿だ」(同氏)とする。

 重点戦略テーマのうちモノづくりに関したものでは「強靭なサプライチェーンの構築」を掲げている。ダイキン工業では、コロナ禍において同社の強みである「市場最寄化生産」が功を奏して、主要モデルの現地での生産への影響は極小に抑えられた。一方、アジアでのロックタウンの影響により、部品調達網が寸断され、サプライチェーンの脆弱性が顕在化した。また、各生産拠点の部品調達状況の把握に時間がかかり、人海戦術でそれに対応しているのが現状だという。

 その中で、地産地消に向けた地域主体での調達へのシフト、リスクに備えた並行生産・バックアップ体制の構築、これらを支えるためのデジタル活用でサプライチェーン情報を一元化した最適なSCMの実現、という3つをテーマとして取り組んでいる。情報を中心としたプロセスイノベーションを推進することが、強靭なサプライチェーン構築の目的となっている。

 もう1つの重点戦略テーマになるのが「変革を支えるデジタル化の推進(人を中心としたデジタルツインの実現)」だ。コロナ禍において、同社の強みであるFace to Faceでの海外拠点での活動が制約を受けた。そうした環境下でも、今までと同様にグローバルへの改善活動、人材育成支援を行うにはデジタルの力を最大限に活用しなければ「モノづくりの進化」を止めてしまうという危機感をダイキン工業は持っている。

 そして、リアルな製造現場をサイバー空間で構築し、時間、場所にとらわれずに製造現場を再現すること、データによるデジタルツインを再現することで、将来想定されるリスクをサイバー空間でシミュレーションし現実場面で起こる前に対策を講じること、などに取り組んでいる。しかし、Web会議は充実してきたものの、Face to Faceによって深められるコミュニケーションの効果には追い付いておらず、その理由については、まだ答えが出せていなとしている。

 これらの他、デジタル投資を大きくすることで、新たな商品、サービス、ビジネスモデルを創出することを目指す。このためには人材の育成が重要であることから、ダイキン情報技術大学を設立し、1500人のデジタル人材を目標に現在育成中だ。森田重樹氏は「ビジネスイノベーション、プロセスイノベーションを進める原動力がデジタルイノベーションであり、それを進めるのが人だ」と、人を中心としたデジタル化が同社の考え方であることを強調した。さらに「強いものが生き残るのではない。ましてや賢いものが生き残るわけでもない。変化に対応できるものだけが生き残れる」とチャールズ・ダーウィンの言葉を引用して、「これが人とデジタルの接点のヒントになるのではと考えている」と述べた。 

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