また、「環境課題の解決に貢献し、持続可能な社会を実現するために、企業が果たす役割」について、環境面では、CO2実質排出量について、2019年を基準に2025年には30%以上の削減、2030年には50%以上の削減を目指している。
具体的な取り組みの一例としては、関西電力との協業がある。関西電力のノウハウとダイキン工業の持つ省エネ技術を組み合わせ、太陽光発電と最適空調制御による大空間(工場)での高効率空調について実証実験を行っている。さらに、サプライチェーンでの人権や環境リスク低減への意識を高めており、地球環境保護に関する情報強化、人権保護に関する情報の強化、現地監査等によるCSR取り組み管理の強化などに取り組む。これを実現するためにデジタル技術を用いたサプライチェーン全体の把握が急務であり、グループ企業や業界、国、地域を超えたデータプラットフォームの必要性を訴える。
ダイキン工業が、中期戦略経営計画で新たに環境価値や社会価値に重点を置くように、日立としても、環境やレジリエンス、安心・安全の観点から顧客の経営視点が大きく変化してきたと捉えている。これに対して、日立の森田和信氏は「サイバーフィジカルシステムをリアルな空間できちんと実現していくことが一つの解になるのではないか」と述べる。これまでは、パッケージソフトを使って個別最適化を行っていたが、今は、さまざまなものをつなげて評価しなければ価値を生み出せないという状況となっており、この方向でビジネスを進めている。
一方で、今回のコロナ禍は、国内の製造業がグローバル競争を勝ち抜くための変化点になったのではないかと見ている。森田和信氏は「人から人への技能伝承で戦ってきた日本の製造業が、製造現場に人が入ってこなくなるという課題に対して今は自動化に頼って対応している。しかし、自動化が進むにつれて、人が考えなくなるというリスクも懸念される」と指摘する。そして、「われわれは、人ありきの製造の世界をどう作っていくのか、そのためにはロボットが人の代わりをするのではなく、人と機械が相互に高め合う仕組み、さらに機械と機械が高め合う仕組みをどう作るか、研究部門と一緒に研究課題として議論している。この、人と機械の新たな相互作用の仕組みである『Multiverse Mediation(多元宇宙論的な調停)』について、さまざまな顧客と一緒に突き詰めていきたい」(森田和信氏)と説明する。また、ロボット・自動化が増えてくる世界で、それらをつなげて、企業の成長、生産性を高めるために、人を中心にサイバーフィジカルシステムを最大限に利用することを考えている。
この他にも、森田和信氏は、コロナ禍においてリモートワークの長期的影響について社内でアンケート調査を行った結果を紹介した。継続的なコミュニケーション不足に対して、不満、不安を感じているかどうかを1700人に対して聞いたところ、本部長、部長層に比べて現場を支えている課長クラスなどの層は「感じている」と答えた数が3〜4倍高かったいという。この結果を受けて森田和信氏は「この2年間は乗り切ったが、不安やフラストレーションが生まれる状況がさらに続くと、企業の成長力や継続性に影響を与える可能性が心配される。これにデジタル、リモートだけで対応できるのか、疑問を感じている」と述べている。
また、日立では環境問題については2030年度までに事務所(ファクトリーオフィス)においてカーボンニュートラル実現を目指していることを説明した。具体的な施策としては、エネルギー消費を最小限に抑えるベストプラクティスの展開のほか、各種インセンティブを設けているという。
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