2021年9月8〜10日までオンラインで開催されたイベント「第1回 スマート工場 EXPO オンライン」で、ダイキン工業 役員待遇 空調生産本部 副本部長 兼 生産技術部長の長谷川功氏が基調講演に登壇。「グローバル展開のための日本型デジタルファクトリーの構築」をテーマに講演を行った。
2021年9月8〜10日までオンラインで開催されたイベント「第1回 スマート工場 EXPO オンライン」で、ダイキン工業 役員待遇 空調生産本部 副本部長 兼 生産技術部長の長谷川功氏が基調講演に登壇。「グローバル展開のための日本型デジタルファクトリーの構築」をテーマに講演を行った。
2024年に創業100周年を迎えるダイキン工業は、売上高約2兆5000億円のうち、空調・冷凍機事業が約9割を占める世界最大規模の空調機器メーカーである。また、化学事業部では、空調機器に必須となる冷媒も製造しており、空調機器と冷媒の両方を手掛ける世界唯一の企業でもある。グループ従業員は約8万5000人で、その内約5万人がモノづくりに関わっている。
空調製品のラインアップは、住宅用をはじめ、大型施設や工場向けの産業用、店舗向けなど幅広い。基本的な事業戦略として、生産拠点を市場近くに作る「市場最寄化」を推進しており、これらの地域ごとに拠点をベースに現地密着型製品の創出と独自の販売店開拓を行っている。2020年には日本、欧州、中国、アジア・オセアニア、米国のグローバル5極でバランスの取れた売上高の実績を記録するなど、グローバルで安定したポジションを築いている。
これらの“地産地消”のモノづくりで目指しているのは、市場の近いところで情報を得て、短いリードタイムで開発と生産を行い、短納期で現地密着型商品をデリバリーするという姿だ。「商品開発は市場に近いところで『聞き』『考え』『発想』しながら、その地域で求められる現地主体型の開発、生産体制を構築する。一方で、開発効率が悪くならないように日本ではグローバル共通のベースモデルを開発し、現地でアレンジ設計する形を作りスピードアップを図ってきた」と長谷川氏はモノづくりの体制について語っている。
また、生産については地産地消生産をさらに進化させて、為替変動のリスクヘッジをはじめ季節商品であるエアコンのリードタイムの短縮、気候や経済変動による需要変化時の在庫リスクヘッジを行っている。その結果、空調・フィルター関連の生産拠点はグローバルで約90カ所となっている。また、開発拠点も25カ所となっているという。なお、生産拠点約90カ所のうち、M&Aによるものは70%近くに上る。この7割のM&A拠点に対しては日本のモノづくりの浸透が課題となっており、それに対応するための標準化を最優先に置いてきた。
ダイキン工業が各工場で重要視するのが、工場内でのジャストインタイム(JIT)生産である。1978年(第1次石油ショック)以降、混合1個流しのPDS(プロダクション・オブ・ダイキン・システム)という空調機器に特化したJIT生産方式を取っている。2000年以降はそれに加えて、生産リードタイムを短縮し、計画をハイサイクル化して需要変動に即応できる体制づくりを進めてきた。いわゆる「必要なモノを、必要な時に、必要なだけ作る」というものだ。
一方で、先述したように海外工場が自前化によるローカライズ化(遠心力)を進める中で、日本の工場はこれら海外工場をコントロールする(グローバル化)「求心力」の必要性にも迫られている。「今後、日本の工場には技術開発力とそれの標準化、人材育成などが中心となるが、マザー工場として求心力と遠心力のバランスを維持することが求められる。バランスを取っていくための原点となるのが標準化だ」(長谷川氏)という。
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