ダイキン工業が描く日本型デジタルファクトリー、グローバル地産地消で必要なものスマートファクトリー(2/2 ページ)

» 2021年09月30日 11時00分 公開
[長町基MONOist]
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「スモールモノづくり」を実現する3つの考え方

 こうした考えの下、ダイキン工業ではベースモデルとしてのPDS生産方式をベースとしながら、海外固有の動きや新しい動きなどを取り込める形で、新たなモノづくりの姿を標準として定める取り組みを進めている。具体的には製造工程ごと(モノづくりの最小単位)に標準化とそれに伴う技術開発を進め、それを組み合わせて展開する「スモールモノづくり」に取り組む。

 その中核となるのが生産ラインを構築する「設備モジュール」の技術、生産量に合わせた設備開発・投資を行う「1/N設備」、さらにロボットなどによる自動化を工程ごとの最小投資で目指す「ローコストオートメーション(LCA)」の3つの考え方だ。これらを有機的にIoT(モノのインターネット)で結び付けることで投資を抑制し、フレキシブルな生産ライン、高い生産性、迅速な展開などを進める。

 「設備モジュールによるライン標準化」は、生産ラインを工程ごとに標準モジュール設計し、地域需要(量、機種)に応じて組み合わせ、フレキシブルに対応可能な生産ラインを構築するものだ。機能と製造工程をすり合わせて技術開発を行い、完成したものを搬送モジュールと検査モジュールに大きく分けて標準化する。これらの設備モジュールには工場IoTのエッジ技術を標準搭載させ効率的に同時展開できるようにしている。

 搬送モジュールは、約4mのアルミ製パイプで作り、検査モジュールは気密・真空、運転検査などの複数の検査モジュールを用意している。これらを生産量と機種に合わせて組み合わせることでラインを構築する。「これらを活用することで、生産の立ち上がりが圧倒的に早くなった。生産立ち上げ期間は機種によっては約2分の1に短縮できている」と長谷川氏は成果を強調する。さらに、設備投資額も半減しており、グローバルで生産技術を共有できることから人材育成にもつながるなどの効果も生まれてきているという。

 この「設備モジュールによるライン標準化」については現在、グローバル展開を進めているところで、2016年に米国のヒューストン工場から開始。投資の大きい海外工場を中心に適用を進め、現在は国内でも展開中だ。

 「1/N設備」については、設備投資の絶対額の大幅低減(投資削減、固定費削減)を目指したもので、大量生産を想定した大型設備ではなく、多品種少量生産をベースとした小型設備で生産を行う考え方だ。小規模生産であっても1台当たり償却費同等投資を進め生産量の増加を実現できる。一方で、部品生産における組み立てラインの同期直結生産(組み立てライン最寄化、部品仕掛レス)などのメリットを生み出せるとしている。

 「ローコストオートメーション開発」については生産ラインの工程を、完成品組み立て、加工、検査、搬送の4つの工程に分け、必要に応じた低コスト自動化を推進し、投資のミニマム化を図っていく取り組みだ。 そして、設備モジュール、1/N設備、LCAのハード技術を工場IoTでつなげ、生産性が最大になる運用を実行することを目指す。

人の英知が入り続ける日本型デジタルファクトリー

 ダイキン工業ではこうした標準化を進めているが、その取り組みを進める中で「デジタル技術だけでは、効率化は図れるが、現場は進化しない」という新たな課題も生まれてきたという。そこで、デジタル技術を駆使しながら、日本のモノづくりの強みである現場改善により「進化し続ける標準化モノづくり」を進める。

 現在はデジタル技術の活用を進めるとともに人材育成に力を注ぐ。長谷川氏は「CPS(サイバーフィジカルシステム)に、人の英知が入り続けることにより、モノづくりを進化(改善)させ続けるシステムが、『日本型のデジタルファクトリー』だと考えている。これの実現を目指している」とする。この考えに沿って、熟練技術の早期習熟を行う施策としてデジタルトレーニングシステムを作成した。また、人と機械の協働型自動化の推進、官能検査の自動化(AI活用)、現場改善のスピードアップなどを進めている。このうち、熟練技術の早期習熟では、技能者育成にあたる「マイスターエキスパート TAKUMI」などの仕組み作りを進めているという。

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