パナソニック インダストリーの組織ぐるみの品質不正、再発防止策を発表:品質不正問題(1/2 ページ)
パナソニック インダストリーは、2024年1月に発覚した電子材料製品における品質不正において設置した外部調査委員会から調査報告書を受け取り、再発防止策について発表した。
パナソニック ホールディングス傘下の電子部品事業会社であるパナソニック インダストリーは2024年11月1日、同年1月に発覚した電子材料製品における品質不正において設置した外部調査委員会から調査報告書を受け取り、再発防止策について発表した。当初はUL Solutions(以下、UL)の認証登録などに関する不正が報告されていたが、新たにその他の顧客企業との個別契約における不正が72件あったことが発覚し、不正の件数は93件となった。
パナソニック インダストリーでは2024年1月に、同社の電子材料事業部が製造、販売する成形材料、封止材料、電子回路基板材料において、UL認証登録などにおける複数の不正行為があったことを公表。その後、外部有識者による外部調査委員会を設置し、調査と原因分析を踏まえた再発防止策の提言を依頼していた。外部調査委員会は、委員長を寺脇一峰氏(弁護士、シン・ベル法律事務所)が務め、委員として棟近正彦氏(早稲田大学教授 品質マネジメント専門)、松山遥氏(弁護士、日比谷パーク法律事務所)が参加している。
今回、外部調査委員会によって作成された調査報告書では、当初公表された認証に関する違反21件に加え、その他顧客との個別契約にかかわる不正72件が発覚し、不正件数は合計で93件となった。
発覚した不正93件の分類[クリックで拡大] 出所:パナソニック インダストリー
調査報告書において紹介された不正の内容については以下の通りとなっている。
- 電子材料事業部 郡山工場で発覚した不正3件(公表済み):銅張積層板における、UL認証登録に関するデータ改ざん
- 電子材料事業部 四日市工場および南四日市工場で発覚した不正7件(公表済み):成形材料、封止材料、電子回路基板材料において、ULなどへの登録と異なる配合の製品を、登録品番を変えることなく製造、販売した。定期監査時に指定された品番と異なる配合のサンプルなどを作成し提出した
- 電子材料事業部 アユタヤ工場で発覚した不正2件(公表済み):銅張積層板において、ULなどへの登録と異なる配合の製品を、登録品番を変えることなく製造、販売した。定期監査時に指定された品番と異なる配合のサンプルを作成し提出した
- デバイスソリューション事業本部 松江工場で発覚した不正1件:松江工場などで開発、製造していたフィルムキャパシターについて、認証規格を充足しない製品を出荷した。また、認証機関による監査や各認証の更新審査に際して、認証機関がサンプルに対して行う試験に確実に合格するようにするため、認証登録外の材料を使用した専用の特殊サンプルを準備し、認証機関に提出していた。対象製品は、1985年頃から2021年にかけて製造、販売されていた3品番で、これら事実は2022年1月頃に経営層が報告を受けていたが、対象製品が既に製造、販売が終了していることや、市場不具合の情報はないことなどを理由に、認証機関や顧客に対する報告は行わなかった
- 産業デバイス事業部 FAデバイスビジネスユニットで発覚した不正1件:UL508認証を取得していたPLC2製品の電源ユニットについて、2014年10月頃、登録していた電源ユニットの一部の部品を変更した際、ULプロシージャの記載内容に変更が生じたにもかかわらず、ULに対して必要な変更申請を行わず、ULプロシージャに記載された管理対象部品とは異なる部品を用いて電源ユニットを製造、販売していた。なお、PLC製品は2022年に生産を終了したが、電源ユニットは、保守用に限って製造、販売を継続していた
- 電子材料事業部 四日市工場と南四日市工場で発覚した不正2件:封止材料および成形材料において、検査成績書の改ざん、ロット番号の改ざん、規格未達品の出荷が行われていた。検査成績書の改ざんは1980年代から2024年3月頃までの間に行われていたが、是正に向けた取り組みは行われてこなかった
- メカトロニクス事業部傘下の子会社で発覚した不正2件:リレー製品において、工程不良率の虚偽報告や、工程確認時の不適切な対応、開発段階の試験結果の虚偽報告などの不正が行われていた。工程不良率の虚偽報告は遅くとも2000年代後半以降から行われていた
- メカトロニクス事業部 伊勢工場で発覚した不正1件:複数の産業リレー製品において、遅くとも2009年以降、電気的寿命、誤動作振動または誤動作衝撃に関する品質評価試験がNGであったにもかかわらず、特段の改善措置を講じずにそのまま製造、販売を継続した。この中で一部の商品については虚偽報告も行われていた
- デバイスソリューション事業部 千歳工場で発覚した不正4件:チップ型積層サーミスターにおいて、遅くとも2009年6月頃から2023年11月頃までの間、出荷検査時における抵抗値の実測値が、納入仕様書に定められた抵抗値許容差を逸脱した場合、社内で独自に設定した出荷基準に満足していれば合格として扱い、出荷検査成績書には実測値とは異なる値を記載していた
- 電子材料事業部 郡山工場および広州工場で発覚した不正2件:銅張積層板において、郡山工場では遅くとも2015年5月から2016年4月頃までの間、CAF試験(絶縁性能の寿命試験)の測定データを書き換えて顧客に報告する不正が行われていた。また広州工場においても、2019年3月頃から2024年1月頃までの間、データ改ざんが行われていた
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