富士通は「Fujitsu Uvance Update」として、クロスインダストリーで社会課題解決に貢献する事業モデルである「Uvance」の進捗状況について説明し、事例などを紹介した。
富士通は2025年7月16日、「Fujitsu Uvance Update」として、クロスインダストリーで社会課題解決に貢献する事業モデルである「Uvance」の進捗状況について説明した。
富士通のUvanceは、クロスインダストリーで社会課題とビジネス課題の両方を解決することを目指したもので、「Sustainable Manufacturing」「Consumer Experience」「Healthy Living」「Trusted Society」などの事業領域に重点的に取り組んでいる。従来のシステム導入が技術主体だったのに対し、事業部門や技術などを複合的に組み合わせ、大きな社会課題の解決につなげていくようなアプローチである点が特徴だ。
富士通 執行役員副社長 COOの高橋美波氏は「Uvance関連の売上高は着実に成長している。2024年度(2025年3月期)は関連売上高目標4500億円に対し、4800億円と大きく伸ばすことができた。2025年度は7000億円を目標としている。これはサービス関連売上高の30%レベルとなる」と述べる。
今後さらに、Uvance関連の売り上げを伸ばす意味で重要視するのがAI(人工知能)エージェントだ。高橋氏は「調査ではAI導入企業の6割が10%以上の生産性向上を実感している。さらに、2030年までの間に自社のビジネスプロセスの半分以上にAIが組み込まれると考える人が81%にもなっている。AIがあらゆる業務領域を支え、人と協働する時代が来ている」と訴える。
AIエージェントが業務を変革する例として紹介したのが、サプライチェーンマネジメント(SCM)システムにおける在庫管理を複数のAIエージェントが担うというデモンストレーションだ。
在庫の欠品リスクが生じた際に「コスト重視で最適解を」という指示を出すと、調達エージェントと、在庫エージェント、製造エージェント、販売エージェントという4つの業務特化型のAIエージェントと、それを取りまとめるオーケストレーターとなるAIエージェントが調整し、最適解を数十秒で出す。従来は人手でこれらの部門間での調整などを行わざるを得ず、数週間や1カ月レベルで時間がかかるケースがあった。
また、富士通の特徴としてそれぞれのAIエージェントが何を考えてそのアクションを行おうとしたのかという会話履歴を閲覧できる。さらにそのアクションに対しフィードバックを行うことができるため、プロンプトの改善などにより、AIエージェントをさらに成長させられる。
また、設計や製造での現場においてAIエージェントを活用した研究段階の技術なども紹介した。設計現場向けでは「パラメトリック製品設計特化生成AI」を紹介した。これはパラメトリックな標準コンポーネントの寸法データなどを生成AIで取得して一覧表を作成し、そのデータを基にCADでそのコンポーネントを組み込んだ設計データを生成するというものだ。CADはiCADを活用している。寸法データの一覧表を制作する際に設計ルールなども併せて定義することで、瑕疵のない設計データを自動作成できるという。
製造現場向けの「現場作業エージェント」では、AIを活用した行動分析で工程を可視化し、標準作業との比較や分析で改善点を見つけ、報告の自動作成を行い業務工数を削減する。業務報告はServiceNowとの連携で行う。人材育成や技能伝承などにも貢献する見込みだ。「これらの技術は研究開発段階だが、まずは富士通社内から実証を進めていく」(担当者)としている。
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