これらの不正内容を受け、外部調査委員会では原因として、以下の9つの問題点を指摘する。
これを受けてパナソニック インダストリーでは、品質不正の再発防止に向けて、主に以下の3つの点で対策を進める。
経営層が、コストや納期ではなく品質を優先する「安全第一、品質第二、生産第三」をぶれずに品質保証活動を行う意識を醸成する他、品質保証の本質についての理解を深めるため、本社主導の下、トップマネジメントからリーダー層まで、階層ごとの教育を行う。各階層や職務に応じた職責と役割に基づき、階層別の品質教育を実施し、定期的な教育(年1回以上)を導入する。
現場の声を正しく拾い上げるために、各職場にWIP(Work In Progress)ボードを設置し、業務の滞留状況を見える化するとともに、困り事の吸い上げを行う。また、他部署との協力が必要な困り事を共有するためのHELPボードも設置する。その他の取り組みも含め、従業員が声をあげやすくする仕組みを再構築し、不適切行為を発見しやすくする。
加えて、企画、開発、量産の各判断ゲートにおいて、専門家レビューなどの客観的判断を導入する。プロジェクトの難易度、安全関連などによる開発ランクを明確に定義し、高ランクの開発においては本社直轄部門による見届けを実施する。
品質不正が行えないようなけん制機能の強化を進める。2024年10月に本社直轄品質部門に新設した監査部を中心に、ビジネスユニットの独立性が強い中にあっても、事業部、本社が十分な監督責任を果たすことのできるけん制機能を持つようにする。
また、品質人材育成とローテーションの仕組み化を行う。品質管理活動において、品質人材がその役割を最大限に発揮できるよう、各職位における役割定義を見直す。具体的には、人材の登用に関する基準を定め、役割定義に基づいた教育を行うことで、人材育成を強化する。さらに、品質責任者は事業部門間での人材ローテーションを実施し、任期を定めたローテーションを通じて、各部門の閉鎖性を改善することで、品質部門の独立性を高める。
顧客要求仕様や、法規認証との整合を各ステップで見届ける体制も新たに構築する。顧客要求の実現性を、データ、専門家レビューなどにより客観的に判断し、履行不可能な顧客要求については顧客と調整を行う。調整が難しい場合は、経営幹部が顧客と直接調整を行うようにする。加えて、全顧客要求項目の達成状況を要求管理表で受注から量産まで一貫管理を行うようにする。技術法規、認証ITシステムの導入により、仕向け地や製品ごとに多数ある法規選定の抜けもれ防止を行い、法規アップデートや認証更新などの業務負荷を低減する
UL認証などの公的規格への不正に対する再発防止策についても新たに用意する。UL認証などの公的規格への不正が発生した要因として、認証取得に責任を持つ部門が認証プロセスの管理をしていたことがある。そこで、新製品開発および量産段階で不正機会の介在を許さないサンプル管理の仕組みとして、認証取得部門と独立したサンプル作製部門が認証仕様書を基にサンプルを作製する際に、品質部門が立会い、サンプルを即時受け取るという3部門によるけん制が効く仕組みを構築する。さらに新製品開発では、開発中の製品が取得すべき認証を未取得の状態では、最終製品の出荷ができない仕組みを構築する。
なお、今回の品質不正の調査結果を受け、パナソニック ホールディングス 代表取締役 社長執行役員 グループ CEO 兼 パナソニック インダストリー 取締役の楠見雄規氏と、パナソニック インダストリー 代表取締役 社長執行役員 CEOの坂本真治氏は、役員報酬の50%を4カ月間自主返上するとしている。
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