製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集

2024年は品質不正撲滅に“待ったなし”、「不正ができない」体制をどう作るかMONOist 2024年展望(1/3 ページ)

2023年は品質不正の問題が製造業を大きく揺るがした。ここ数年続いている品質不正についての問題はいまだに収まる兆しは見えず「日本品質」の陰りにつながっている。「透明性」に問題を抱える日本のモノづくり現場において同様の問題が今後も続くのは明らかで、早期に抜本的な取り組みが必要だ。

» 2024年01月05日 07時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 ここ数年、製造業における品質不正の問題が相次いでいる。さらに、組織的な継続性があるケースや、悪質性の高いケースなども次々に露見し、「日本品質」とされてきた世界からの評価に陰りが見え始めている。当初は「個々の企業としての問題」として見られてきたこれらの品質不正の問題だが、これほどまでにさまざまな領域で不正が明らかになっていることを見ると、日本のモノづくりに根深く潜んでいるいくつかの問題があると見るのが自然だ。2024年はこうした課題をあらためて見つめ直し、対策を進めていくことが求められている。

2023年も多くの不正が明らかに

 2023年はいくつかの大きな品質不正問題が明らかになり、話題となった。その中で現在も自動車業界に大きな影響を残しているのが、2023年12月に発表されたダイハツ工業の検査不正の問題だ。生産を終了したものを含め、64車種とエンジン3機種で型式認証の試験での不正行為が確認され、自主的に出荷を停止する措置などを取った。正しい手順で検査が行われていないケースや検査データの差し替えなどがあり、最も古い不正行為は1989年から確認されているという。そのため、幅広くサプライヤーへの影響などが広がっており、今後も含めて再発防止策に注目が集まっているところだ。

photo ダイハツ工業において発覚した不正行為の年代別分布[クリックで拡大] 出所:ダイハツ工業

 また、2023年に明らかになった不正の中で、悪質性が特に注目されたのが、2023年2月に発表された島津製作所の子会社である島津メディカルシステムズによるものだ。これは、医療機関に納入したX線装置の保守点検時に、電力供給回路に不正に外付けタイマーを取り付け、このタイマーを作動させることで一定期間経過後に意図的にエラーを発生させ故障を装い、保守(補修)部品を有償交換していたというものだ。出入り事業者である信頼性を悪用し“知識の不均衡性”を突いたユーザー側には防ぎようがない事象であったことから、特に注目された。

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