島津製作所は、同社子会社の島津メディカルシステムズで行われていた保守点検業務に関する不正行為の内容について、外部調査委員会による調査結果を発表した。島津メディカルシステムズ熊本営業所では、タイマーにより意図的に装置が故障したかのように見せかけ、保守部品を売るという不適切行為が行われていたことが2022年9月に発覚している。
島津製作所は2023年2月10日、同社子会社の島津メディカルシステムズ(以下、島津メディカル)で行われていた保守点検業務に関する不正行為の内容について、外部調査委員会による調査結果を発表した。
島津製作所では内部通報を受け、2022年5月から社内調査を開始。2022年9月に外部調査委員会を設置し、調査を行ってきた。関係者へのヒアリングやデジタルフォレンジック調査の結果、7人の嫌疑濃厚者を特定し5件の医療機関に対する不正行為を確認した。
2022年9月に発覚した不正行為は非常に悪質なものだ。島津メディカル熊本営業所に所属するサービス技術者が、2016〜2018年にかけて行っていたもので、まず熊本県内の5つの医療機関に納入したX線装置の保守点検の際に、電力供給回路に不正に外付けタイマーを取り付けた。このタイマーを作動させることで、一定期間経過後に意図的にエラーを発生させてX線装置が故障であるかのように装い、保守(補修)部品の交換を有償で行っていたという。
具体的には、保守点検の際に、X線装置のスタータから電力を供給する回路の途中に外付けタイマーを介入させることで、設定した時間が経過すると電力供給を停止させた。X線高電圧装置からX線管装置への高電圧の電力供給がされないため、X線の照射ができなくなる。X線装置が稼働しなくなると、医療機関から島津メディカルに一報が入り、この連絡を受けて、島津メディカルのサービス技術者が訪問し、X線装置を点検し、タイマーを回収すると共に「部品の故障による不具合発生である」と説明し、医療機関を誤信させ、有償交換に応じさせる。
不正行為で不具合が偽装されたのは、X線管装置の主要部品の一つであるX線管かX線高電圧装置のいずれかだった。いずれも数年間から10年間程度の一定期間の使用により、消耗や経年劣化などで使用できなくなり交換が必要となる部品だ。有償交換の場合、100万〜300万円となる。不正の流れは以下の通りだ。
外部調査委員会では、事前の社内調査で得られた記録や資料、電子メールや社内ファイルサーバなどに対するデジタルフォレンジック調査、島津メディカル全社員に対するアンケート調査、島津製作所の医用機器事業部に対するアンケート調査、その他取引記録などから、不正行為の広がりについて調査を進めた。
その結果、7人のサービス技術者を嫌疑濃厚者として特定。7人の中で5人は、九州支店の熊本、宮崎、鹿児島、佐世保出張所にて営業所長の地位にある管理職クラスのサービス技術者だった。残りの2人は、上司である営業所長の影響下で不正行為を実行していたとみられる。これらの不正行為はタイマーの証拠隠滅などが可能であることから広がりの把握は難しいが、調査の結果、補償相当事案は以下の通りとしている。
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