データは取れるがつながらない ものづくり白書に見る製造業DXの課題ものづくり白書2026を読み解く(2)(1/2 ページ)

日本のモノづくりの現状を示す「2026年版ものづくり白書」が2026年5月29日に公開された。本連載では「2026年版ものづくり白書」の内容から製造業のDXや競争力などに関するポイントを抜粋して紹介する。今回は、製造現場のデータ利活用の現在地について紹介する。

» 2026年06月12日 06時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 経済産業省、厚生労働省、文部科学省は2026年5月29日に「2026年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)」を公開した。

 ものづくり白書とは「ものづくり基盤技術振興基本法(平成11年法律第2号)第8条」に基づき、政府がものづくり基盤技術の振興に向けて講じた施策に関する報告書だ。2026年で26回目の策定となる。経済産業省、厚生労働省、文部科学省の3省が共同で作成しており、モノづくりに関する基礎的なデータや、その年の課題や政府の取り組み、モノづくり振興施策集などを紹介している。

 今回は、製造現場におけるデータ活用の現在を紹介した第4章 第3節 第2項の内容を基にまとめた。

⇒過去の「ものづくり白書を読み解く」はこちら

「マニュファクチャリングチェーン」でのデータ活用を推進

 製造現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中、AI(人工知能)の進展により、製造現場で収集されるデータを活用したさまざまなソリューションが現実的なものとなってきている。これらを本当に最適な形で活用していくためには、業務プロセスに合わせたデータ取得や活用の仕組みを整備していく必要がある。

 そこで「2026年版ものづくり白書」では、「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン第2版」を基に、4つのチェーンで構成されるプロセスを「マニュファクチャリングチェーン」として定義する。

 4つのチェーンは、設計から展開し「何を作るのか」についての情報をつなぐ「エンジニアリングチェーン」、材料調達から商品納入までモノの動きの情報をつなぐ「サプライチェーン」、サプライチェーンの中から工場中心の製造機能を切り出した「プロダクションチェーン」、顧客接点と価値提供をつなぐ「サービスチェーン」である。

 「2026年版ものづくり白書」では、このマニュファクチャリングチェーン上のデータの取得や活用状況、連携状況について調査を行っている。

photo マニュファクチャリングチェーンの概要[クリックで拡大] 出所:スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン第2版

データの取得は66%も「効果あり」は43.9%

 ものづくり白書の作成に向けて実施された三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査「令和7年度産業関係調査等事業(我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査)報告書」によると、マニュファクチャリングチェーンにおけるデータの「取得」を行っている企業は66.0%となっている。一方で「活用」できているとした企業は51.4%、さらに「効果」を得られているとした企業は43.9%となっており、データの取得をしていてもうまく活用できていなかったり、成果に結び付けられていない層が一定レベルで存在する。

photo マニュファクチャリングチェーンにおけるデータの取得/活用/効果の有無[クリックで拡大] 出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「令和7年度産業関係調査等事業(我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査)報告書」

 これらの活用をチェーンごとに目的別に見ていくと、最も活用が進んでおり成果を生み出しているのは、サプライチェーンに関する項目だ。特に「生産計画/調達/在庫管理の各業務負荷軽減、効率化、生産性向上」において、最もデータの取得と活用がなされ、効果が得られているという結果となっている。

photo マニュファクチャリングチェーンにおけるチェーンごとのデータの取得/活用/効果の有無[クリックで拡大] 出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「令和7年度産業関係調査等事業(我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査)報告書」

 一方でデータの取得や活用、効果において最も低い数値となったのが、「ベテランなどのノウハウ見える化」だが、これらが進まない理由として、68.6%が「ベテランなどの知識や経験などの形式知化が難しい」という声が挙がっている。また「形式知化の方法やツールが分からない、活用できていない」(28.6%)や「形式知化のための時間や経営資源が不足している」(28.1%)も高い比率となっており、AIなどを活用することで、これらの負荷をどれだけ下げられるかがポイントになっているといえる。

photo ベテランなどのノウハウの見える化や技術や技能の継承に当たっての課題[クリックで拡大] 出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「令和7年度産業関係調査等事業(我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査)報告書」
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