三菱電機は3年間で1兆円のM&A投資を見込むが、8000億円規模の事業で終息見極め製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

三菱電機は経営戦略について説明した。構造改革として2025年度中に8000億円規模の事業見極めを行う方針を示した他、今後3年をめどに1兆円をかけて新たなM&Aを進める計画などを明らかにした。

» 2025年05月29日 07時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 三菱電機は2025年5月28日、「IR Day 2025」を開催し経営戦略について説明した。構造改革として2025年度中に8000億円規模の事業見極めを行う方針を示した他、今後3年をめどに1兆円をかけて新たなM&A(合併と買収)を進める計画などを明らかにした。

イノベーティブカンパニーへの変革を推進

 三菱電機は2025年度から新たな中期経営計画を進行中だが「イノベーティブカンパニーへの変革」を掲げ、3つの方向性での取り組みを進める。

photo 三菱電機 代表執行役 執行役社長の漆間啓氏

 1つ目は、新たな価値創出で、三菱電機が強みとするコンポーネント製品とデジタル技術を組み合わせて新たなソリューション創出に注力する。その基盤として「Serendie」を活用し、ビジネスモデル変革を進めていく。2つ目が経営体質の強靭(きょうじん)化で、事業の保有意義を見極め間接費用の適正化や資本の適正化を進めていく。3つ目がサステナビリティの推進と風土改革で、環境に貢献しながらそれを事業成長につなげる「トレードオン」の考えの下、新事業の創出に取り組んでいく。また、環境変化に柔軟に対応するグローバル体制の整備や風土改革の自走化に取り組む。

 2025年度(2026年3月期)については順調に推移し、三菱電機 代表執行役 執行役社長の漆間啓氏は「売上高と営業利益で目標値の達成を見込み、営業利益率は過去最高となる見通しだ」と述べる。

photo 中期経営計画の進捗[クリックで拡大] 出所:三菱電機

8000億円規模の事業見直しに取り組む

 ただ、安定的な成長を実現するためには、課題も多く残されている。具体的な課題として、分社化した自動車機器事業の構造改革と、空調事業における欧州ATW(Air To Water)事業の成長鈍化への対応、長期停滞に陥っているFAシステム事業の構造改革の推進などを挙げる。

 これらを含む価値再獲得事業では、事業の見極めと収益性改善を推進する。具体的には、これらを対象として2025年度中に8000億円規模の事業を終息するのか、継続するかについて、見極めていく。漆間氏は「全てを終息するわけではないが、三菱電機内でのシナジーや今後の事業見通しなどを含めて、必要かどうか見極めていく。その中で、ベストオーナーとしての視点で、外部のパートナーと組んだ方がよければその方向性を模索する。それでも難しい場合は終息や撤退も検討する」と考えを述べている。

photo 各事業の状況[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 今後は、ROIC(投下資本利益率)を活用したBS(貸借対照表)経営を推進し、ROE(自己資本利益率)10%の早期達成を目指す。

 そのための必要な投資は積極的に進めていく。成長投資として、新たなM&A投資枠として1兆円を用意する。具体的には、既存事業強化として、グローバルで戦えるインダストリー分野、HVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning)分野で非連続な成長を実現するためにM&Aを行う。さらに、デジタルを活用した事業間シナジー創出に取り組み、それらを早期実現するためのM&Aも検討する。具体的にはエネルギーマネジメント分野でのM&Aを進める。さらに、AIやデジタル領域の強化を進め、データ収集や分析、運用最適化、予知保全を強化するM&Aについても積極的に行う方針だ。

 漆間氏は「目指しているのはコンポーネント×デジタルの両輪で成長する姿だ。そのためにM&Aも通じて両輪で強化する」と述べている。

 一方で、体質の強化も同時に進めていく。不採算事業の終息やグローバルサプライチェーン強化、資材や部品の共通化、集中購買の推進などに取り組む。さらに、DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI(人工知能)の活用により、業務を削減し、社外のパートナーシップ推進や統廃合で関係会社数の3分の1を削減する。

photo 今後の成長と資本適正化の方針[クリックで拡大] 出所:三菱電機
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