製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集

品質力は「落ちている」と「変わらない」が拮抗、低下要因は人材不足と技能不足品質不正問題(1/2 ページ)

MONOistでは2023年7月12日に「品質」に関するオンラインセミナー「激変する市場環境 持続可能な攻めの品質管理の在り方とは?」を開催し、114人の来場者にアンケートを回答いただいた。その中で現場での実情が見える内容について抜粋しリアルな課題感などを紹介する。

» 2023年08月28日 08時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 MONOistでは2023年7月12日に「品質」に関するオンラインセミナー「激変する市場環境 持続可能な攻めの品質管理の在り方とは?」を開催し、114人の来場者にアンケートを回答いただいた。その中で現場での実情が見える内容について抜粋しリアルな課題感などを紹介する。

 なお、アンケートの回答を取りまとめた詳細なレポートについては、電子ブックレットとしてダウンロード可能としている。回答者の業種や職種などの属性情報や、より詳しいコメントなどを把握したい方は、こちらをご利用いただきたい。

品質ヒヤリハットの実情調査(2023年7月版)

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 セミナー「激変する市場環境 持続可能な攻めの品質管理の在り方とは?」では、114人にアンケートにご回答いただきました。品質現場で抱えている課題感が見える興味深い反応が見られましたので、電子ブックレットとしてこれらの内容をとりまとめて紹介しています。

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品質ヒヤリハットは「経験あり」が56.1%

 まず「品質について問題につながりかねないヒヤリとした経験がありますか」という質問に対し、「ある」と答えた回答者は56.1%となった。

photo 品質について、問題につながりかねないヒヤリとした経験があるかという質問に対する回答[クリックで資料ダウンロードページへ]

 アンケートでは実際にヒヤリとした経験内容についてもフリー回答で聞いているが、今回の回答で多かったのが検査のミスや抜け漏れなどによるものだ。以下に代表的な回答を抜粋する。

  • 検査の目をすり抜けて誤納品を納入した事例あり。後ほど正規品を納入して事なきを得た
  • 検査員のばらつきにより不良品見逃しの可能性があった
  • 出荷前の目視検査の判定基準が、個人判断で変更されていた
  • 製造記録抜け、検査記録抜け設計開発段階から量産移行する段階での伝達漏れ
  • 不適合品の流出
  • 不良品が流出したことが分かった時

 回答の中には「技術、品質保証、経営層が数値のごまかしを容認していること」というものもあり、昨今増えている品質検査不正問題につながりかねない状況がそのまま残されている状況が示唆されている。

 また、もう1つヒヤリ体験につながった体験で回答が重なったのが、製造におけるイレギュラーな対応である。

  • 樹脂成型品において製造工程をイレギュラーに止めた影響で製品強度が落ちているものがあり、故障につながる事案があった
  • ラインアウトした製品が再投入で社内検査を通り抜け社外に流出
  • 新規製品立ち上げ直後、品質不具合が発生。明確な判断基準がないため対症療法的な基準を設けてその場をやり過ごした
  • 設備の条件を定量的に上下限内での管理ができていると思っていたが、操作のミスで基準となる治具を変化させてしまって数値がずれていたが管理内のため、そのまま生産されその治具の定期点検まで継続されていた

 複雑なプロセスが組み合わさって製品が作られていく中でミスは必ず生まれる。ただ、日常的な作業の中ではそのミスの発生を織り込んだ上で検査などを行い、ミスを通過させないような仕組みが作られているが、イレギュラー案件や事故が発生した際は、ミスがスルーされやすくなることが見て取れる。

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