本連載では、新しい領域にチャレンジする中小製造業の“いま”を紹介していきます。第21回では島田電機製作所のボタンを“押す”がテーマの施設「OSEBA」を運営する、島田電機製作所を取材しました。
本連載はパブリカが運営するWebメディア「ものづくり新聞」に掲載された記事を、一部編集した上で転載するものです。
ものづくり新聞は全国の中小製造業で働く人に注目し、その魅力を発信する記事を制作しています。本連載では、中小製造業の“いま”を紹介していきます。
「ボタンを知り、ボタンの魅力に触れる」をテーマに、日本全国あらゆる種類のボタンを探し求めていく企画、シリーズ「ボタン」。記念すべき第1回は、三和電子さんに「ゲームボタン」の特徴や制作秘話を伺いました。
第2回となる今回は、ボタンを“押す”というコンセプトで作られた施設「OSEBA」で現在話題沸騰中のあの会社! そう、島田電機製作所さんにお話を伺います。「1000のボタン」をはじめとするボタンの数々はもちろん、ユニークな社風から生まれる自由な発想と情熱、「島田人」と称されるスタッフの方々の個性にも注目です!
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まずは、島田電機製作所さん(以下、島田電機)がどのような企業で、どんな人たちが働いているのか、島田電機 代表取締役の島田正孝(しまだ まさたか)さん、同 企画部の小倉心愛(おぐら こころ)さんにお話を伺ってみましょう。
【お話を伺った人】島田人No.001:島田正孝(しまだ まさたか)
島田電機 代表取締役社長。「島田カルチャー」をはじめとする数々のアイディアで会社を牽引する、島田電機の総合プロデューサー。島田電機イチの島田電機ファンを自負している。やる気フレーズは「自分らしく挑戦!!」。
【お話を伺った人】島田人No.002:小倉心愛(おぐら こころ)
島田電機 企画部総務グループ、企画チーム主任。広報活動のエキスパートであり、島田人(島田電機で働く人)の全力サポーター。「OSEBA」内にある「333ボタン早押しチャレンジ」の世界チャンピオンでもある。やる気フレーズは「大盛り無料」。
――現在、ボタンのテーマ空間「OSEBA」が大人気の島田電機ですが、普段はどのようなものを製作されているのでしょうか?
小倉さん 当社は1933年の創業以来、エレベーターの押しボタンや、エレベーターが到着したことを知らせる到着灯などをオーダーメイドで製作しています。一般的なマンションなどのエレベーターというよりは、ホテルやショッピングモールなど、より意匠性の高いエレベーターの部品を扱うことが多いですね。某有名テーマパークや、誰もが知っている高層ビルなどにも当社の製品が使われていたりするので、もしかしたら皆さんもどこかで見かけたことがあるかもしれません。
また、当社はモノづくりだけでなく、「事業活動はファンづくり」を基本理念として掲げており、「組織づくり」や「ファンづくり」といったところにも力を入れています。こちらも、ぜひ注目していただきたいポイントですね。
――ファンづくり、ですか。狙いはどんなところにあるのでしょう?
小倉さん ひと昔前は、良い製品を作っていれば売れるという考え方もありました。ですが、現在は競争環境も激しくなっており、品質が良いだけではうまく売れません。
そこで私たちは、競合他社と同じフィールドで闘い続けるのではなく、「自分たちのブランド力を高め、唯一無二の存在になろう」という考えに至りました。自らの価値を高めることで、お客さまだけでなく私たちスタッフも島田電機のファンになる、そんな企業を目指していこうと。その結果、多くのメディアにも取り上げていただけるようになり、いろいろなところでファンになってくれる方も増えているのではないかなと思っています。
――ブランド力を高めるために、具体的にはどのような活動をされているのでしょうか?
島田さん 「企業は人なり」という言葉がありますが、まさにその言葉通り、人を中心とした組織づくりを心掛けています。具体的には、「島田カルチャー」と題して、ヒューマンスキルの向上や従業員同士で感情を共有できるイベントなど、「働きたくなる30以上の仕組み、仕掛け」を設定し、エンゲージメントを重視した環境を大事にしています。
例えば、社内には「ボタンちゃんカフェ&バー」という施設があるのですが、こちらは仕事を終えたスタッフ同士が自由にお酒を飲みかわせる場所となっており、意見交換の場としても役立っています。ビールからワインまであらゆるお酒を取りそろえており、もちろんお金はかかりません。飲み放題ですよ。
――社内で、しかも無料でお酒が飲めるなんて、夢のようですね!?
島田さん かつて、多くの企業がそうだったように、当社も人と人とのコミュニケーションを大事にしていきたいんです。スタッフ同士が素で接して、何でも話せる関係になることで、自由な発想を促したいというのもあります。ただし、昔のやり方をそっくりまねるのではなく、時代に合った新しいコミュニケーションの形を見つけていきたいとは思いますね。
――島田カルチャー、そして人と人のつながりを重視した組織づくり。ステキな試みだと思います! 他にどんな活動がありますか?
小倉さん 「島田電機のことをもっと知ってもらいたい!」という思いで工場見学を始めたところ、希望者が殺到し、ありがたいことに抽選による当選確率が1%という大人気コンテンツとなりました※。そういった経験を踏まえ、当社のボタンへの情熱を注ぎ込む形で誕生したのが、ボタンをテーマとする「OSEBA」です。OSEBAは、ボタンを通して、お子様からご年配の方まで誰でも楽しめるような内容になっています。当社にとって、ファンづくりの集大成ともいえるような施設ですね。
※ものづくり新聞編集部の取材時は休止中
――島田電機の自由でユニークな発想、そして人とのつながりを大事にする思いが感じられました。良いお話をありがとうございました!
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