あなたの知らない「ボタン」の世界 唯一無二の“押し放題”施設ができたワケワクワクを原動力に! ものづくりなヒト探訪記(21)(3/7 ページ)

» 2025年03月12日 07時00分 公開

島田電機の「ボタン」に見る、エレベーターの未来

 ここからは、島田電機で作られているボタンや、そのメカニズムについて学んでいきたいと思います。ボタンに詳しいのはもちろんのこと、板金加工のエキスパートでもある、島田電機 製造部の齋藤太郎(さいとう たろう)さんにお話を伺いました。

島田電機の齋藤さん 島田電機の齋藤さん 出所:ものづくり新聞

【お話を伺った人】島田人No.003:齋藤太郎(さいとう たろう)

島田電機 製造部板金グループ所属の技士。板金加工に懸けるアツい思いから、ついた異名は「日本一、カド(切断面)を気にする職人」。やる気フレーズは「大丈夫何とかするから」で、言葉通り同僚からの人望も厚い。「情熱を内に秘めた島田人」としても知られている。


――早速ですが、島田電機で製造されている製品の特徴を教えていただけますか?

齋藤さん 当社は、エレベーターホールや操作盤に使われる「開」「閉」「矢印」のような押しボタンや、その周囲に使われるフレーム、到着灯などを製造しています。いわゆる量産品とは異なり、全てオーダーメイドの特注品ですので、手作り感に関しては特徴的であるかと思います。

 例えばボタンのデザイン1つを取っても、クライアントの要望に合わせてフォントや材質などを選定しながら、建物にマッチするよう工夫しています。唯一無二のデザイン性という部分は、やはり特注品の魅力といえるのではないでしょうか。また、研磨のような仕上げ工程は職人が手作業で行っており、人の手で実際に触ったときに手触りが良いか、バリ(突起)が指に引っ掛かってケガをしないかなど、感覚的な部分や安全面に至るまで細かくチェックをしています。

皆さんおなじみ、エレベーターのボタン。右上にある三角の小さなパーツは「文字芯」と呼ばれるもので、数字の4などを作るとき、削られたアクリルの中央にはめるステンレス板のこと。この小さな部品を手作業ではめ合わせて、きれいなデザインの文字を作っていきます 皆さんおなじみ、エレベーターのボタン。右上にある三角の小さなパーツは「文字芯」と呼ばれるもので、数字の4などを作るとき、削られたアクリルの中央にはめるステンレス板のこと。この小さな部品を手作業ではめ合わせて、きれいなデザインの文字を作っていきます[クリックして拡大] 出所:島田電機
こちらは「ピン打ち点字」と呼ばれる作業。エレベーターボタンの周囲にある点字を作るため、 職人さんが手作業でピンを打ち込んでいます。非常に細やかな作業です…… こちらは「ピン打ち点字」と呼ばれる作業。エレベーターボタンの周囲にある点字を作るため、 職人さんが手作業でピンを打ち込んでいます。非常に細やかな作業です……[クリックして拡大] 出所:ものづくり新聞
エレベーターボタンのフレームを、ヤスリで磨いてきれいにしています。バリを取り、滑らかな面を出すことで、美しさと安全性に優れた製品が出来上がるのだそうです エレベーターボタンのフレームを、ヤスリで磨いてきれいにしています。バリを取り、滑らかな面を出すことで、美しさと安全性に優れた製品が出来上がるのだそうです[クリックして拡大] 出所:ものづくり新聞

――確かに、島田電機のボタンは一見してスタイリッシュなものが多いように思います! 職人さんの手作業が入ることで、安全性が高いというのもうれしいですね。では、こちらで作られているエレベーターのボタンと、一般的な家電製品に使われているボタンでは、どんな違いがあるのでしょうか?

齋藤さん 一般的に、家電製品のボタンは信号をオン、オフするためのスイッチという意味合いが強いかと思います。それ故にデザインはあまり重視されておらず、シンプルな形状のものが多いように感じますね。

 それに対して、当社のエレベーターボタンは意匠性を重視しており、建物や空間にフィットしたものばかりです。独自性が高く、見た目にも楽しんでいただけるのではないでしょうか。また、エレベーターは多くの人が利用するため、ボタンを押す回数も非常に多くなります。耐久性というのも重要な要素で、当社のボタンは20〜30年の使用に耐えるほど頑丈に作られています。これも一般的な家電製品のボタンとは異なる点かと思いますね。

中央にあるボタンは、アクリル板の向こう側も意匠品(デザイン部)です。クリアパネルのボタンは、非常に洗練されたデザインで高級感がありますね! ボタンだけでなく、ボタンの周囲を美しく見せるために工夫されているのが分かります 中央にあるボタンは、アクリル板の向こう側も意匠品(デザイン部)です。クリアパネルのボタンは、非常に洗練されたデザインで高級感がありますね! ボタンだけでなく、ボタンの周囲を美しく見せるために工夫されているのが分かります[クリックして拡大] 出所:ものづくり新聞

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