コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第25回は「用途開発マーケティング」の考え方を事例をもとに紹介していく。
自社が保有する技術の可能性を広げるためには、従来のマーケティング手法だけでは十分ではありません。既存市場の深耕(刈り取り)だけでなく、新たな用途を見いだす(種まき)活動にも注力し、両者をバランスよく進めていくことこそが、技術マーケティングにおいては重要な取り組みです。
本記事では「用途開発マーケティング」の考え方と、その具体的な進め方、そして超音波はんだ技術を活用した新市場開拓の事例について解説します。
製造業が技術マーケティングを行う際、「刈り取り」と「種まき」という2つの目的を整理することが重要です。この2つの目的と進め方を理解することで、自社技術の可能性を最大限に広げることができます。
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技術マーケティングにおいて、まず想定しやすいのが「刈り取りのためのマーケティング」です。これは、すでに想定されているターゲット顧客を明確化し、新たな顧客の獲得を目的としています。一般的なマーケティング手法とほぼ同義であり、短期的に売り上げを上げられる一方、ターゲットを特定したマーケティング手法ですので、技術の新しい用途は見つかりにくいと考えられます。
一方、技術系企業ならではの目的として「種まきのためのマーケティング」があります。これは、現時点で想定されていない分野へ技術を広め、新たな用途を見つけてもらうことを目的としています。
当社ではこれを「用途開発マーケティング」と呼んでいます。短期的に成果(売り上げ)が得られにくいものの、未知の市場を切り開き、中長期で大きな成果につなげる重要な手法です。
技術マーケティングの究極のゴールは、この2つの活動をバランスよく進めることです。種まきを行い、そこで出てきたアイデアや用途の可能性を選定し、さらなる技術改良やターゲットの明確化を進めていく。そして、その成果をもとに刈り取り(売り上げ創出)につなげる好循環を生み出すことが、技術マーケティングの理想形といえるでしょう。
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