EMSを経営価値に、工場や工程単位の「まるごとEMS」を開始したOKIのEMS事業製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)

成長を続けてきたOKI EMS事業だが、今後どのような展開を進めていくのか。新たに2025年4月にEMS事業部長に就任したOKI 執行役員の前野蔵人氏に話を聞いた。

» 2025年06月23日 08時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 OKIはATMなど高信頼性が要求されるモノづくりで培った製造技術を生かし、2002年からEMS(Electronics Manufacturing Service、生産受託サービス)事業を展開。対応する産業領域を広げるとともに、DMS(Development&Design Manufacturing Service)などカバー範囲も拡張し、成長を続けてきた。今後もさらなる成長を続けていくために、EMS事業としてどのような展開を進めていくのか。新たに2025年4月にEMS事業部長に就任したOKI 執行役員の前野蔵人氏に話を聞いた。

成長のために顧客ポートフォリオのバランスを

 前野氏はEMS事業部長就任以前は技術本部長やイノベーション推進センター長などを歴任してきた。その中で「EMS事業は成長事業という位置付けで、成長軌道を取り戻すことが役割だと考えている。技術本部長として携わってきたOKIの抱える新たな技術を紹介し、EMS事業に付加価値をつけることなども考えている」と前野氏は考えを述べる。

photo OKI 執行役員でEMS事業部長の前野蔵人氏

 OKIのEMS事業は、ATM製造で培った高信頼性が要求されるモノづくりを強みに、情報通信機器、計測機器、産業機器、医療機器、航空宇宙関連機器などの分野で高い評価を得てきた。ただ、ここ数年はコロナ禍によるサプライチェーンの問題や、半導体不足、FA/ロボット産業の景況感などの影響を受け、目標達成には苦戦が続いていた。

 「EMS事業は年率10%程度の成長を続けてきており、2026年度に売上高1000億円という目標を立てていたが、サプライチェーンやそれぞれの産業の市況から2028年度に達成を遅らせた。2025年度は768億円という目標を立てているが、これは過去最高の数値となる。これらの目標を達成し成長軌道を取り戻せるようにさまざまな対策を進めていく」と前野氏は語る。

 その取り組みの1つが、顧客ポートフォリオのバランスの見直しだ。OKI EMS事業部では、航空宇宙領域の強化などに合わせ、ここ数年、ベンチャー企業なども含めたEMS事業の新規顧客企業の開拓に力を注いできた。しかし、一部で成果を生み出しつつあるものの、新規顧客を開拓し、商談をまとめ、モノづくりを行い、EMSによりOKIの工場で製品を製造するようになるまでには非常に長い時間がかかる。この投資フェーズが長くかかりすぎることから、経営リソースを圧迫する要因の1つとなっていた。そのため、新規顧客開拓は継続するもののバランスを見直し、既存顧客の新製品や新領域への展開と組み合わせて最適な形で進められるようにする。

 「EMS事業にとっては、量産を請け負う形にまで持っていければ、十分に利益が生まれる。そこに至るまでの時間が長くかかりすぎると、経営面では苦しくなる。新規開拓は継続して進めるものの、経営的にそのバランスをうまく取れるようにしていく。営業や技術のリソース以上に新規顧客を取るのではなく、既存顧客の中でOKIの技術力を生かせる領域を広げていけるように提案を強化する」と前野氏は考えを述べる。

 こうした展開を実現する意味でもここ数年強化を進めてきたのがDMSだが、前野氏は「成果を生み出すのはまだまだこれからだ」と現状について語る。

「DMSで新規顧客の場合、設計期間だけで2年以上かかり、まだ大きな成果を生み出しているとはいえない。成果につながりやすいのは、既に量産などで実績のある顧客が次機種で設計領域まで依頼してくるような場合だ。適切にマネジメントを行い、成長できるDMSを実現する」(前野氏)

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