2016年のデトロイトショーを彩った和製スポーツカーの競演とセダンの復権デトロイトモーターショー2016 レポート(5/6 ページ)

» 2016年02月19日 10時00分 公開
[川端由美MONOist]

責任ある行動を約束したVWグループ

 プレミアム路線をけん引する欧州勢では、メルセデス・ベンツEクラスの発表が大きな話題を呼んだ。併せて、「S63カブリオレ」「SLC」「スマート・カブリオレ」の3車種のオープンモデルもそろい踏みした。

 Audi(アウディ)のプレゼンテーションは、43年前にアポロに搭乗して月に行った宇宙飛行士、ジーン・サーナン氏をゲストに招き、“Mission to Moon”なる月面モビリティの紹介からスタートした。その後CEOのルーパート・シュタットラー氏が登壇。同氏は「VWグループとしての責任ある行動」を約束した上で、「A7」「Q8」を含めて3車種のプラグインハイブリッドモデルの投入や、SUVタイプの電気自動車の発表予定を伝えた。

アウディの燃料電池車のコンセプトカー「h-tron」 アウディの燃料電池車のコンセプトカー「h-tron」 (クリックして拡大) 出典:Audi

 加えてアウディは、燃料電池車のコンセプトカー「h-tron」を発表するなど、北米市場において電動化に向かって舵を切る姿勢を強調した。h-tronは、「フランクフルトモーターショー2016」で発表した「e-tron クワトロ」の燃料電池車版で、水素が満充填の状態から600kmの走行が可能だ。燃料電池スタックのみで最高150psを出力し、必要に応じてリチウムイオン電池からの出力を追加して最大550Nmのトルクを発揮する。前90kW/後140kWのモーターで4輪を駆動するというパワフルさだ。

「A4アバント」をベースにSUVルックに仕上げた「オールロードクワトロA4」 「A4アバント」をベースにSUVルックに仕上げた「オールロードクワトロA4」 (クリックして拡大)

 また市販車では、新型「A4」に、「オールロードクワトロ」が追加された。「A4アバント」をベースに車高を高め、バンパーやタイヤを大型化し、SUVルックに仕上げた。地上最低高が34mm増となり、オフロードの走破性を高めた。ガソリンとディーゼルの排気量2l直列4気筒と7速Sトロニック(デュアルクラッチトランスミッション)の組み合わせとなる。

Volkswagenのヘルベルト・ディース氏Volkswagenのミハエル・ホルン氏 VWのプレゼンテーションにはヘルベルト・ディース氏(左)やミハエル・ホルン氏(右)など役員がそろい踏みだった (クリックして拡大)

 ディーゼルエンジンの排出ガス不正問題の渦中にあるVWは、VW全体を率いるマティアス・ミュラー氏と、ブランドのトップであるヘルベルト・ディース氏がそろい踏みだった。北米部門のCEOであるミハエル・ホルン氏も登壇し、我慢強い対応を続けているディーラーへの謝意を伝えた。また、チャタヌーガ工場でのパサートの生産を開始するなど、北米での現地生産を進めていることを強調。アップルのCarPlay、「Android Auto」「Mirror Link」といったコネクティビティへの対応、安全性の向上など、全方位で前向きに取り組むことを、再度、宣言した。

販売が好調だった「ティグアン」のプラグインハイブリッドモデルが世界初公開だった 販売が好調だった「ティグアン」のプラグインハイブリッドモデルが世界初公開だった (クリックして拡大) 出典:Volkswagen

 2015年の販売は安定していたことを強調し、なかでもSUV「ティグアン」が3万6000台と記録的な売上だったと報告した。ディーゼルエンジン「TDI」のオーナーについては、20万5000人が登録を済ませており、今後も着実に対応を進めていくとした。製品では、「ビートル」ファミリーを一新し、コンバーチブルが追加される。また、四輪駆動のラインアップを強調し、2016年7月以降に「スポーツオールトラック」を投入するとした。

「CES 2016」のイノベーションアワードを受賞した電気自動車「BUDD-e」 「CES 2016」のイノベーションアワードを受賞した電気自動車「BUDD-e」 (クリックして拡大)

 VWブランドのCEOを務めるディース氏は、謝罪から会見をスタートさせた。欧州では、850万台のインプリメンテーション(要求を満たすためにハードウェア/ソフトウェアを調整すること)を実施し、米国の顧客にも環境規制に適合するソリューションを提供するとした。EPA(米国環境保護庁)とCARB(カリフォルニア州大気資源局)とは前向きな話し合いを持っており、特にこの数週間における前進は目覚ましいという(関連記事:新世代のフォルクスワーゲンを進める「4つの柱」と「3つの段階」)。年初のCESの基調講演で発表した電気自動車「BUDD-e」がCES 2016のイノベーションアワードを受賞し、電気自動車やコネクティビティに注力する方針をあらためて示した。900億米ドル(約10兆3230億円)の投資を実施し、雇用も増やすという。

 ディース氏は「これまでに、数百万人もの米国人がVWブランドを愛してくれている。高いクオリティ、デザイン、プレミアムカーを手の届く価格で届けることで、VWブランドへの愛情を再燃させたい」と語った。10年以内に全セグメントにSUVを用意し、中でも中型SUVはチャタヌーガ工場で生産を開始し、2017年にはティグアンのロングボディも世に送り出すなど、北米市場に向けたラインアップの拡大を約束した。

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