BMWは、お待ちかねの「M2クーペ」を発表した。最高出力370ps/最大トルク465Nmを生む排気量3lの直列6気筒ターボエンジンにより、外形寸法4475×1855×1410mmの小ぶりなボディを加速する。日本市場向けには7速DCTのみだが、海外では6速MT/7速DCTがそろう。オーバーブースト機能により、最大トルク500Nmを発揮することも可能で、時速0〜100kmの加速をわずか4.3秒でこなす俊足ぶりにも注目だ。同時に「M40i」も発表し、スポーティなイメージを印象づけた。
伝統的にデトロイトショーを重要な発表の場としているPorsche(ポルシェ)は、「911シリーズ」最強の「911ターボ」と「911ターボS」を発表した。2015年に変更を受けた「911カレラ」が過給エンジンを搭載して話題になったが、もともとターボ付きだった「911ターボ」は、大型の空力パーツで外観を武装するとともに心臓部に20psのスープアップを施された。一方ターボSは大型コンプレッサー付き新型ターボの採用で580psへと最高出力が高められた。
セダンが復権を果たしていたことも2016年のデトロイトショーの特徴だ。ボルボ「S90」、リンカーンブランド「コンチネンタル」といったフルサイズセダンから見ていこう。ボルボは従来、SUVのXC90をフラッグシップモデルとしていたが、「S80」の後を継ぐ形で最上級セダンのS90を登場させた。ウッドやレザーといった素材を組み合わせた優しい印象のインテリアは、北欧ブランドのボルボらしさが際立つ。最高出力250hpを生む排気量2l直列4気筒ターボと、同316hpを発揮する排気量2l直列4気筒ターボ&スーパーチャージャーに加えて、プラグインハイブリッドがそろう。大型動物の検知もできる準自動運転機能「パイロットアシスト」の搭載も話題だ。
2014年に遅ればせながら中国進出を果たし、好調な伸びを示しているリンカーンブランドからは10代目となるフラッグシップモデルのコンチネンタルが登場した。アメリカンフルサイズらしい伸びやかなボディに、フォードのお家芸たる過給ダウンサイズエンジン「GTDI」を積む。排気量3lのV型6気筒エンジンで、小排気量ながらターボによる過給で最高出力400psを生む。内外装の質感の向上、装備充実も図られている。
Bentley(ベントレー)のデザイナーだったルカ・ドンカー・ボルケ氏が移籍して話題になっているHyundai Motor(現代自動車)からは、コンパクトセダンの「エラントラ」が北米上陸を果たした。新開発ボディは剛性を高め、衝突安全性と乗り心地の双方を向上。シンプルながら、力強いショルダーラインで、全体の印象を引き締めた。
同時に、現代自動車がこれまで高級車として販売してきた「ジェネシス」を独自ブランドとして立ち上げたことも見逃せない。同ブランドとして初の市販モデルは、事実上、「エクウス」の後継となる最上級セダンの「G90」だ。全長5.2mを越えるフルサイズセダンで、パワートレインは排気量3.3lのV型6気筒ターボ、排気量3.8lのV型6気筒、最高出力425psを生む排気量5lのV型8気筒の3機種が用意される。
2008年のリーマンショック以降、往時の勢いを取り戻せずにいたデトロイトショーだが、ガソリン価格が下がって、多少なりとも景気の明るさが見え、「米国のモーターショーはこうでなくては!」といった華やかさを取り戻しつつあることを意識させられた。
川端由美(かわばた ゆみ)
自動車ジャーナリスト/環境ジャーナリスト。大学院で工学を修めた後、エンジニアとして就職。その後、自動車雑誌の編集部員を経て、現在はフリーランスの自動車ジャーナリストに。自動車の環境問題と新技術を中心に、技術者、女性、ジャーナリストとしてハイブリッドな目線を生かしたリポートを展開。カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の他、国土交通省の独立行政法人評価委員会委員や環境省の有識者委員も務める。
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