自動車業界の今後の方向性が示される「2016 International CES」と「デロイトモータショー2016」を取材した桃田健史氏によるレポートの後編をお送りする。久々に盛り上がりデトロイトモーターショーだが、桃田氏は、「規制対応と売らんがための現実主義が強く、かつてのように『クルマの未来』は示されていない」と指摘する。
米国ネバダ州ラスベガスでの「CES」、さらにサンフランシスコ・ベイエリアでのテスラ「モデルS」の自動車線変更の取材を終え、空路4時間でミシガン州デトロイトに到着した。「北米国際自動車ショー(通称:デトロイトモーターショー、以下、デトロイトショー)2016」を取材するためである。
西海岸とはうって変わり、辺りは雪が積もり路面は凍結していた。朝晩の気温は−15℃、日中でも−5℃前後しかない。ただし、カナダとの国境であるデトロイト川に表面に氷は張っておらず、デトロイト住民にとっては「例年並み」の寒さにすぎない。
今回のデトロイトショーは、報道陣向け公開日初日となる2016年1月11日朝7時半のFiat Chrysler Automobile(FCA)の会見から始まった。
FCAの壇上に登場したのは、ミニバンの「パシフィカ」。特徴は、排気量3.6l(リットル)V型6気筒ガソリンエンジンのアトキンソンサイクル化と、プラグインハイブリッドシステムの追加だ。モーターだけで走行するEVモードでは。最大30マイル(約48km)走行できる。会見後、記者団の質問に対して同社の開発担当者は、「CAFE(企業別平均燃費)への対応を考慮すれば、今後さらにプラグインハイブリッド車のラインアップを増やすことになるだろう」と語った。
続くGeneral Motors(GM)の会見では、Chevrolet(シボレー)ブランドの電気自動車「BOLT EV」の量産モデルが主役だ。前週のCESで車両本体はお披露目されていたが、技術詳細の関連資料については今回のデトロイトで公開された。GMブース内にはBOLT EV用の電池パックも展示され、電池容量は60kWh、電池セル数は288個、電池モジュールは10個(床面に8個、その上に2個の組み合わせ)、そして「電池セルも電池パックも全て、韓国内のLGエレクトロニクスが行い、米国へ輸出する」(GMのEV開発担当者)という。
こうした大型の電池パックを搭載することで、満充電からの走行距離は200マイル(約320km)を超える。ただし、「30分間の急速充電で90マイル(約144km)走行が可能」という表記も付け加えている。これについてGMの商品企画担当の幹部は、「電池の寿命を考慮して、急速充電ではなく、自宅や勤務先の会社での240V交流電流による充電(満充電までに約9時間かかる)を推奨している」と説明した。また充電インフラ整備については、「弊社が主導で行うのではなく、インフラ事業者や各自治体との連携を前提に考えている」という。
さらに販売台数について聞くと、「プラグインハイブリッド車の『Volt』とは客層が違うだろう。台数的には、個人向けとしては限定的だと思う。その代わり、カーシェアリング向けなどのフリート(商用向け)需要を期待している」との見解を示した。
結局、BOLT EVの市場導入は、CAFEやZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル規制)法などのレギュレーションに対するマッチングにすぎない。ホンダと連携して開発を進めている燃料電池車の市場導入は、早くとも2020年以降と見られており、それまでの間はBOLT EVが“場つなぎ役”となるのだろう。
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