デトロイトショーで目立つ「売らんがため」の現実主義、「クルマの未来」姿なく2016 CES&デトロイトモーターショー2016レポート(後編)(2/4 ページ)

» 2016年01月28日 11時00分 公開
[桃田健史MONOist]

フォルクスワーゲンのプラグインハイブリッド車強化、狙いは改正ZEV法への対応

 こうした動きは、Volkswagen(フォルクスワーゲン)グループでも見られた。米国での販売増を狙うSUV「ティグアン」の新モデルに、「ゴルフ」と同様のプラグインハイブリッド仕様車「GTE」を設定した。排気量1.4lのターボガソリンエンジン(TSI)に、容量12.4kwhのリチウムイオン電池パックを搭載。EVモードでは20マイル(約32km)、燃料を満タンの状態から走行可能な距離は930kmである。「今後、北米市場ではGTEシリーズの拡充を図る」(フォルクスワーゲン関係者)という。

「ティグアン」のプラグインハイブリッドモデル「ティグアンGTE」 「ティグアン」のプラグインハイブリッドモデル「ティグアンGTE」(クリックで拡大)
プレスカンファレンスでプラグインハイブリッドシステムについて説明するフォルクスワーゲン プレスカンファレンスでプラグインハイブリッドシステムについて説明するフォルクスワーゲン(クリックで拡大)

 ZEV法は、米国の自動車の2018年モデルイヤーが始まるタイミングである2017年春に一部改正される。現行法での対象となる企業は、「カリフォルニア州内での販売台数が年間6万台」から「同2万台」へと引き下げられる。このため、フォルクスワーゲンもZEV法の対象となる。GTEシリーズの拡充は、一連の“ディーゼルエンジン車の排気ガス不正スキャンダル”への影響に対する“ディーゼルエンジン車からの代替”ではなく、あくまでも米国内でのレギュレーションマッチングを見据えた長期の商品戦略である。

 また、Audi(アウディ)ブランドとしては、燃料電池車の「h-tron クワトロコンセプト」を世界初公開した。前後の車輪軸にそれぞれモーターを持つ四輪駆動車で、燃料電池スタックの出力は110kw。水素を満充填した状態からの走行距離は600km。加速性能は、時速0〜100kmが7秒だという。具体的な発売時期について「2018年頃を目指す」としたが、他社との技術連携を含めて、まだまだ未確定な要素が多いと感じる。

アウディブランドの燃料電池車「h-tron クワトロコンセプト」 アウディブランドの燃料電池車「h-tron クワトロコンセプト」(クリックで拡大)

 フォルクスワーゲングループとしては、ZEV法に対するレギュレーションマッチングで、2018年モデルイヤー以降に“プラグインハイブリッド車のZEVクレジット換算係数が大きく下がる”ことを鑑みて、燃料電池車や電気自動車の投入が“必然”である。ただし、燃料電池車の普及と大きく関わる水素ステーションのインフラ整備は、ZEV法に直接的に関与するカリフォルニア州が明確な拡充計画を示しているだけだ。フォルクスワーゲングループとしては「カリフォルニア州政府の顔色を見ながら、北米市場全体と欧州市場での、燃料電池車と電気自動車の普及計画を考慮する」というのが、本音であろう。

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