―― SAPはインダストリー4.0でどういう役割を担うと考えますか。
ハーツバーグ氏 インダストリー4.0で理想とされるITシステムを実現するには、次の5つのシナリオを実現しなければならない。1つ目は企業としての基幹システムを現場から最上位のシステムまで垂直統合するということだ。2つ目が製造機械同士をM2Mで結び工場内での水平統合を実現すること。3つ目は、これらの製造系のシステムにeコマースシステムと統合することになる。これにより受発注の情報などがすぐに工場とやりとりできるようになる。
4つ目がサプライヤーとのシステム統合で、それぞれの可視化や品質管理などのシステムを接続させる。これは企業間の壁を超えた水平統合ということができる。そして、5つ目がマシンクラウドだ。これは機器から直接クラウドにデータを上げて、リアルタイムで分析などを行い、予防保全を図るものとなる。
ハーツバーグ氏 SAPでは、これらのうち、工場内のM2M通信については自社で行っていないが、その他の4つの領域については、既に各種アプリケーションやソリューションを用意している。SAPとしてはこれらの領域を狙っていく。
―― SAPがインダストリー4.0やIoTに取り組む上で課題だと考えていることは何ですか。
ハーツバーグ氏 課題は数多くあると考えているが、1つが莫大に増えるデータ量にどう対処するかということだ。データサイエンティストなどデータを扱うプロフェッショナルの数が不足しているということもあるが、これらを補う機械学習などの機能もまだまだ進展の余地があると考えている。また、セキュリティの問題は今以上に企業全体に関係する大きな問題になっていくだろう。
SAPでは「パーフェクトエンタープライズ(Perfect Enterprise)」として、将来のICTのシステム構成の予想図を示している。1990年代の企業システムは基本的にバラバラのシステムだったが、2015年現在ではERPを基軸としたパッケージシステムにより、統合管理が行えるようになった。さらに2025年には、IoTの進展により企業内システムにおいても、IoTアプリケーション/データ管理が重要な要素を占めるようになるという。これらは自社内、サプライヤーなどの他社、顧客が、一貫したシステムによって連携できるようになり、無駄なくハイクオリティなモノづくりが行えるようになる。
この姿が実現していく中で、現在IoTと考えられているもの、インダストリー4.0として示されているものも、企業システムの中に組み込まれてくるというのがSAPの考えだ。既にSAPではこれらの動きの基盤になり得るアプリケーションやシステム群を用意しており「多くの企業の成長を後押ししていきたい」(ハーツバーグ氏)としている。
ドイツ政府が推進する国家プロジェクト「インダストリー4.0」。その目指すところは、現在よりも一段と高度化した生産システムです。同様のモノづくりのさらなる高度化に向けた取り組みは、米国や日本などでも巻き起ころうとしています。「インダストリー4.0が指し示す次世代工場の姿」特集では、「インダストリー4.0」が目指す姿や標準化の道のりなどを追うとともに、日本で高度な生産方法や生産技術に挑戦する動きを取り上げています。併せてご覧ください。
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