構造改革の中、パナソニックHDがR&Dで注力する領域と凍結する領域の考え方製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)

パナソニック ホールディングス グループCTOである小川立夫氏が報道陣の合同取材に応じ、研究開発(R&D)領域における2024年度の成果を紹介するとともに、構造改革を踏まえた技術開発部門としての考え方を説明した。

» 2025年05月21日 06時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)では2025年5月20日、グループCTOである小川立夫氏が報道陣の合同取材に応じ、研究開発(R&D)領域における2024年度の成果を紹介するとともに、パナソニックグループ全体の構造改革を踏まえた技術開発部門としての考え方を説明した。

約10年ぶりに長期技術ビジョンを発表

 パナソニックHDでは2024年7月に約10年ぶりに長期の技術開発の方向性を示した「技術未来ビジョン」を発表した。その中で実現したい未来像として「一人ひとりの選択が自然に思いやりへとつながる社会」を置き、そのために3つの「めぐる」をコンセプトとして打ち出した。1つ目は「エネルギー・資源がめぐる」、2つ目が「生きがいがめぐる」、3つ目は「思いやりがめぐる」だ。環境問題などに対する「資源価値最大化」、業務の効率化などによる「有意義な時間創出」、テクノロジーによる他者理解などを促進する「自分らしさと人との寛容な関係性」などを示し、これらを実現する新たな技術の開発に注力している。

photo パナソニック ホールディングスの技術未来ビジョンにおける実現したい未来像とそれに必要な技術群[クリックで拡大] 出所:パナソニック ホールディングス

 パナソニックHDでは、このビジョンの下、国内の展示会である「CEATEC 2024」、米国で開催された「CES 2025」、そして「大阪・関西万博」で、基軸となる技術を出展してきた。例えば、サステナビリティ領域では、建材一体型ペロブスカイト太陽電池として1.0×1.8mのガラス建材のパイロットラインを立ち上げ、試作品を紹介したり、海洋生分解性高濃度セルロースファイバー成形材料「kinari」を開発し、「海洋生分解性バイオマスプラ」マークを取得したりした。また、ウェルビーイング領域では、AI(人工知能)カメラ搭載冷蔵庫などAIをくらしや仕事で実装する取り組みを進めた。また、日本語特化型大規模言語モデル(LLM)の活用についてストックマークと提携し、さまざまな技術開発を推進。創業者である松下幸之助氏の発言を再現したAIの開発などを行ってきた。

photo CES2025で展示された建材一体型ペロブスカイト太陽電池[クリックで拡大]
photo パナソニック ホールディングス 執行役員 グループCTOの小川立夫氏

 これらの手応えについて、小川氏は「技術未来ビジョンを発表して、大きく分けて2つの意見をいただいた。1つは、実現したい未来像には共感するという話で、もう1つは、将来的なビジネスへの道筋が見えないという話だ。確かに抽象度が高い話だったが、それをビジネスに結ぶ解像度を上げようとさまざまな形で研究開発を進めている」と語っている。

 ただ「技術未来ビジョンを発表したからこそ『一緒にやりたい』という声掛けも多くもらえている」と小川氏は手応えについても語る。

「一連の展示会で中核となる技術を示すことができたことで、多くのコメントもいただけるようになり、R&D部門として励みになるとともに刺激も受けた。こういう取り組みは今後も続けていく」(小川氏)

photo CES2025で展示されたkinariのランプシェード[クリックで拡大]
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