パナソニックHD 執行役員 グループCIOの玉置肇氏が合同取材に応じ、同氏がけん引役を務める同社のプロジェクト「PX(パナソニックトランスフォーメーション)」の推進状況について説明した。
パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)は2024年9月17日、東京都内とオンラインで同社 執行役員 グループCIOの玉置肇氏への合同取材に応じた。2021年度から始まった同社のプロジェクト「PX(パナソニックトランスフォーメーション)」のけん引役を務める玉置氏が、その推進状況について説明した。
4年目を迎えたPXは、各事業会社のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援とパナソニックグループ全体のIT経営基盤の底上げを目的とするだけでなく「働き方やビジネスのやり方を含めた全社のプロセスを変革し組織風土を変えて経営のスピードアップを目指す、情報システムだけにとどまらない取り組み」(玉置氏)である。
玉置氏が入社した2021年5月を起点に同年9月までを準備期間の「PXZERO」とし、2021年10月から2023年末までの約2年間で足元を固める「PX1.0」を進め、2024年からはPX1.0で基礎固めした上でデジタルを積極的に用いてビジネスモデルを変える「PX2.0」に移行している。
このPXを推進する上での基本的な考え方になっているのが「PX:7つの原則」である。2023年3月の役員合宿でパナソニックHD グループCEOの楠見雄規氏をはじめ経営陣が自ら考案したもので、7つの原則のうち3つが「業務プロセスの変革」を目的としており、PXの主眼がプロセス変革にあることがうたわれている。
さらに2023年10月には、組織が大きく構造が複雑なパナソニックグループにおける業務プロセスの変革を進めやすくするため、プロセスオーナーの定義と規約化も行った。実際に、プロセスオーナーを担う役員などの報酬を決める指標としても利用されているという。
業務プロセスの変革におけるビジネスフロー/業務の刷新による経営効率向上の事例としては、パナソニックのくらし事業における実需連動SCMやエレクトリックワークス社傘下の電材事業の現場/代理店DXなどを挙げた。実需連動SCMは流通網から得られる実需データと生産計画を連動させる取り組みで、先行事例では流通在庫を22%削減しながら即納率99%を維持できている。また、電材事業の現場/代理店DXでは、国内で2万社に上る代理店への営業業務を効率化することで付加価値生産性を向上している。
また、パナソニックHDはSAPのERPを利用しているが、「SAP S4/HANA」への移行に合わせて製造現場における業務見直しと、これまで利用してきた追加機能やアドオンプログラムを可能な限り削減して標準機能に合わせる取り組み(Fit to Standard)も着実に進めている。
中国では3年間で13拠点にSAP S4/HANAを標準機能で展開し、ある拠点では年間の間接業務簡素化で8400万円、製造ロス削減で7200万円の削減と出荷リードタイムの3日間短縮などの効果が得られているという。日本では、635あった追加機能を96%減の26に、シンガポールの拠点では2500あったアドオンプログラムを96%減の100にした。玉置氏は「ERPをアップデートする際には、これら追加機能やアドオンプログラムの動作確認のためにかかっていた時間とコストの削減に直結する」と説明する。
調達業務でも業務プロセスの変革を推進しており、設計工程において汎用部品を推奨/誘導する機能を実装することで、非推奨部品の採用を21%、設計の手戻りロスを50億円削減できた。従業員の備品購入プロセスでも、カタログ品の集中契約とカタログ外品の複数社見積もりの機能を実装し、年間で12億円の合理化を達成している。
これらの他、国内従業員7万人の人事情報/問い合わせ入り口を集約し、AI(人工知能)チャットbotによる無人対応やワークフロー化の導入により人手で対応するチケット数を半減できているという。
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