ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は等価可処分所得の国際比較を行っていきます。
今回は私たち家計の所得水準を表す「等価可処分所得」の国際比較を行っていきます。
各国の所得水準を比較する際、企業に雇用されている人々の平均給与だけでは全体像を把握することはできません。例えば、労働者の平均給与が高くても、失業者が多ければそれだけ社会全体としての所得水準が低くなります。逆に、平均給与が低くても、給付や財産所得などが多く、合計としての所得水準が高い国もあるかもしれません。
このように、給与水準や、その他の所得、再分配なども含めた総合的な所得水準を国際比較しようとした場合、等価可処分所得は大変参考になる指標となります。等価可処分所得については、前回記事で詳しくご紹介しましたので、以下の記事もぜひご一読ください。
今回は、OECD(経済協力開発機構)で公開されている等価可処分所得の国際比較を行っていきたいと思います。
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等価可処分所得とは、可処分所得を世帯人員の平方根(√)で割って基準化した指標です。可処分所得は、総所得から拠出金などを差し引いた手元に残るお金です。市場所得(Market Income)から再分配を足し引きしたものが可処分所得という言い方もできます。OECDの場合は次のように定義されています。
可処分所得 = 雇用者所得 + 事業所得 + 財産所得 + 経常移転給付 - 経常移転負担
= 市場所得 + 経常移転給付 - 経常移転負担
市場所得 = 雇用者所得 + 事業所得 + 財産所得
等価所得とは、所得を世帯人員の平方根(√)で割って基準化した数値です。これにより、単身世帯も含めて世帯構成の違いを1つの指標に統合して表現することが可能です。
等価可処分所得 = 可処分所得 ÷ √世帯人員数
等価市場所得 = 市場所得 ÷ √世帯人員数
それでは、先進国の等価可処分所得について国際比較してみましょう。まずは生活実感に近い購買力平価(モノやサービスの値段を基準とした為替レート)でドル換算した数値の推移からです。
購買力平価でドル換算すると、各国の物価水準をそろえた上で、市場為替レートの変動に影響されない「数量的=実質的な数値」となります。
図1は主要先進国および、スイス、オランダ、スウェーデン、フィンランド、韓国の現役世代(18〜65歳)の等価可処分所得 平均値について、購買力平価(家計最終消費支出)でドル換算したグラフです。
日本(青)は1990年代は他国と遜色ない水準でしたが、最近では他国よりもかなり低い水準となっています。米国はかなり高い数値ですが、スイスやオランダ、カナダ、スウェーデン、韓国なども高水準となっています。
現役世代の全世帯に対する等価での数値ですので、失業中であっても雇用者所得ゼロで集計されるはずで、失業率の高い国ほど等価所得は低くなる傾向となります。しかし、失業率が低い日本は、失業率が高いフランスやイタリアよりもかなり低い水準であることが分かります。
これは、そもそもの給与水準が異なることに加えて、失業者や生活困窮者への社会扶助による所得などが加算されているためと考えられます。
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