最新のデータで、もう少し詳細の中身を見てみましょう。図2はOECD各国の等価可処分所得について、その内訳まで表現したグラフです。差引の等価可処分所得が高い順に並べています。
等価可処分所得は、先進国の中で米国が最も高く、ルクセンブルクやノルウェー、スイスなど一般的に所得水準が高いとされる国々が続いています。日本は、OECD37カ国中26番目で、先進国の中ではかなり低い方です。
もう少し詳細に中身まで見ていきましょう。以下で述べる所得は全て等価所得の平均値であることにご注意ください。
まず、給与水準を表す雇用者所得を比較してみると、等価可処分所得の高い国ほど、雇用者所得が高い傾向が確認できます。その中でも日本の等価可処分所得は26位と低位ですが、雇用者所得は順位の割にやや高めです。
失業率と就業率や再分配などで日本と好対照なのはフランスですので、フランスと日本の比較をしてみましょう。
フランスは平均給与は日本より高いものの、等価雇用者所得では日本を下回っています。2021年の平均給与(Average Annual wages)を比較してみると、日本が4万264ドルに対して、フランスは5万1439ドルと3割近く高いことになります。一方で、図2から等価の雇用者所得を比較すると、日本は3万3528ドルに対して、フランスは3万2864ドルと日本の方が上回ります。
高齢労働者の割合などの要素もありますが、等価の雇用者所得には失業者も雇用者所得ゼロでカウントされるため、全体で見た給与水準は日本の方が高いということになりそうです。
一方で、再分配による現役世代への経常移転給付を見ると、日本が3434ドルなのに対してフランスは7678ドルと2倍以上の水準です。フランスは失業者が多い分は再分配で補っており、総合的な可処分所得の水準としては日本より高いという見方もできそうです。
今後紹介する再分配による所得格差や貧困率の是正でも、これらの点は重要なポイントとなりそうです。
イタリアと韓国は、事業所得が高いことが特徴です。両国とも個人事業主の割合が高い国であるため、個人事業主による所得の割合が高いことを示しています。
また、経常移転負担の水準を見ると、所得水準の高い国ほど負担額も大きいことが分かります。一方で、給付も多いわけですが、差引の純負担額が多いことも事実のようです。これらの国々と比べると、日本の経常移転は負担も給付も少ない方になります。
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