CO2排出量が不明な製品は選ばれない? 脱炭素対応が中小製造業の未来を分ける中小製造業の生産性向上に効く! ERP活用の最前線(3)(1/2 ページ)

中小製造業向けに「経営の見える化による利益率改善」の打ち手を解説する本連載。第3回は、製品のCO2排出量を示すCFP(カーボンフットプリント)への対応が中小製造業にも求められていることや、CFPの算定にツール活用が有効なことについて紹介する。

» 2025年05月09日 09時00分 公開

自社製品が「選ばれ続ける」ために不可欠なCO2排出量の可視化と対策

 本連載では中小製造業にとって喫緊の経営課題である、データによって経営を見える化することで生産性を改善する手段について検討してきました。第3回となる今回は、ERPでDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めることが、CO2排出量の可視化につながるなど、GX(グリーントランスフォーメーション)にもつながり、自社製品の競争力向上につながるということについて掘り下げます。

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 多くの日本の中小製造業が高い技術力を持っています。一方で、だからこそ企業経営がモノづくりの「匠」の領域に偏重しており、営業活動を含む「売」やデータ分析に基づく経営判断で自社をドライブするための「算盤(そろばん)」とのバランスに是正が必要です。前回は経営状況の可視化(見える化)を実現するERPの重要性と、中小製造業に最適なERPソリューションの解説に加え、それらの具体的な成功事例をご紹介しました。

 目の前にある経営状況の改善は、待ったなしの最重要課題で間違いありません。しかし中小製造業が成長し続けるには、近未来の変化を先取りしながら手を打っていくことも必要です。

 製造業に特に影響が大きいとみられるテーマは、CFP(カーボンフットプリント)への対応でしょう。CFPは、原材料調達から製品の廃棄やリサイクルまでのライフサイクル全体を通して排出されるGHG(温室効果ガス)の排出量をCO2排出量に換算して示すものです。CFPには数値そのものだけでなく、数値を表すための仕組みも含まれます。

 つまりCFPに関する取り組みは、その企業がどれだけ環境に配慮した事業運営をしているかどうかを直接的に示すことです。中小製造業の経営者と会話をしていると、「まずは大企業から」などと、眼前の課題として認識されていない方も多くいらっしゃいます。

 一方で昨今、CFP関連の活動が世界全体で進行中です。製造業の営業に影響が出るような具体的な規制は議論の途上ですが、既に民間団体レベルではルールが決められつつあります。

 先行しているのは欧州です。欧州の大手メーカーへ納入しているサプライヤーなどが最初に影響を受けると予想されます。現時点では義務化されていないとはいえ、中長期的には来るべき義務化に備えなければなりません。自社の工程におけるCO2排出量を証明できることで、今後は納入先との取引がスムーズになるでしょう。そのような社会の到来を見越して、CFPの可視化ツールを整備しておくことが中小製造業には必要です。

 言い換えるならば、CFPの把握は、将来にわたって上位ティアのサプライヤーやメーカーから自社が「選ばれ続ける」ために必須だということです。CFPに関する規制を順守できている企業が選ばれ、順守が間に合わなかった企業は取り残される。「次なる重要経営課題」として、CFPが中小製造業の経営者を悩ませる前に、今から対策しておくべきでしょう。

カーボンフットプリントとは何か カーボンフットプリントとは何か[クリックで拡大] 出所:経済産業省/サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントの算定・検証等に関する検討会「カーボンフットプリント レポ―ト」(2023年3月)の4ページ目から抜粋
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