中小でも給与4%アップ! コスト効率だけじゃない「相乗り型ERP」のメリット中小製造業の生産性向上に効く! ERP活用の最前線(2)(1/2 ページ)

中小製造業向けに「経営の見える化による利益率改善」の打ち手を解説する本連載。第2回は、投資コストのかかるERPを相乗り型で導入することのメリットや、給与4%アップを実現した導入事例について紹介する。

» 2025年04月07日 09時00分 公開

ERP導入が中小製造業で進まない、シンプルな3つの理由

 ITシステムの活用は、諸外国の先進的なモノづくり企業や日本の大企業が成長を維持するために積極的な一方で、日本の中小企業では遅れの目立っていた分野です。

 前回は、製造業の企業経営では製造分野の「匠」、営業活動の「売」、企業をドライブするための「算盤(そろばん)」が一体となっている必要があると説明しました。

 モノづくり企業の経営者の多くは、彼ら自身が製造/生産領域のエキスパートであることから、製造現場のデジタル化には積極的に投資をしている企業に多く出会います。しかし企業経営はそうした「匠」だけでは成り立ちません。売り上げを高め、利益を最大化するための「売」や、「匠」「売」から上がってくるデータを金額換算して経営判断を行う「算盤」のバランスが重要です。

匠/売/算盤のバランス 匠/売/算盤のバランス[クリックで拡大] 出所:アクセンチュア

 経営状況を可視化するERPは、まさに経営者を助け、データに基づいた経営判断をするためのツールです。しかし、筆者らが中小企業経営者向けのイベントなどで「ERPをご存じですか」と問うと、手はまばらにしか挙がらないこともあります。「既に導入している」とおっしゃる経営者に詳しく伺うと、経営状況の可視化には不十分な活用しかできていないこともしばしばです。

 なぜ中小企業にERPが普及しないのか。理由は「(1)認知度・理解度」「(2)コスト」「(3)社内人材」の3つに集約されると筆者は考えています。特に、コスト(費用がかかり過ぎる)は、理由として顕著です。ERPは広範囲の業務を一手に扱うため、投資額も数千万円から億円単位となってしまいます。このコストがハードルとなって、中小企業の経営者は尻込みしているのです。

共通プラットフォームの「相乗り型ERP」でコスト問題を解決

 筆者らが全国の中小製造企業を訪ねて調査とディスカッションを重ねた結果、ITシステムの導入はほとんどの企業で業務領域ごとの部分最適に留まっていることが分かりました。典型例として、財務会計を扱う市販パッケージが使用されている他、生産領域には自社開発のシステム、その他の業務ではExcelやAccessといった非システムのアプリケーションを運用する形で現場を回しています。担当者の名前が付いた巨大な「お化けExcel」もこうした企業の中で発生しがちです。

 このように業務領域間で使用するシステムが異なり社内のデータが分断されていると、粗い情報や不正確な数値、古いデータが紛れ込みます。各領域で生成/集計されたデータは「算盤」に流れ着きます。しかし、「算盤」に流れ着ついた、いわば「生まれ育ちが異なる」データを集計して経営観点から分析することは至難の業です。各部門の管理は精緻だが会社全体になるとざっくりになる“経営状況のどんぶり化”が起きているのです。誰かが悪いわけでもなく、各部門/業務領域がそれぞれに改善を積み重ねることが結果として会社全体を見渡す「算盤」の見える化を阻んでしまうのはとても残念なことです。その解決策がERPですが、ERP導入はコストが高過ぎるというジレンマが中小経営者を悩ませています。

 単独でERPを導入するのに莫大なコストがかかるのであれば、発想を転換して、複数の企業でERPを共有する「相乗り型」はどうか。企業同士がライバル関係にあっても、付加価値には影響しない「非競争領域」が必ずあります。機密情報はしっかりと守りつつ、非競争領域の仕様は共通化する。共通のプラットフォーム(Connected Platform)を使って標準化を行えば、投資額を最小限にできるはずです。

 このコンセプトを基に誕生したのが、中小製造業に適した共通業務プラットフォーム「Connected Manufacturing Enterprises(以下、CMEs:シーエムイーズ)」です。CMEsは個社分散的な投資を解消して、共有する仕組みを利用することから「面的デジタル化」とも言えるでしょう。

コンセプト:中小企業相乗り型による面的展開 コンセプト:中小企業相乗り型による面的展開[クリックで拡大] 出所:アクセンチュア
CMEsプラットフォームのソリューション CMEsプラットフォームのソリューション[クリックで拡大] 出所:アクセンチュア
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