生産領域のDXに踏み出す三菱マテリアル 「ぎりぎりの現場」でどう改革を進めるか製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)

Snowflakeは製品活用事例などを紹介するイベントを都内で開催した。本稿では、三菱マテリアル CDO DX推進部長の端山敦久氏による、同社のDX戦略についての現状と展望を紹介したセッションを、個別インタビューの内容と併せて紹介する。

» 2024年11月18日 07時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 Snowflakeは2024年9月11日〜12日、同社の製品活用事例などを紹介するイベント「SNOWFLAKE WORLD TOUR TOKYO」を都内で開催した。本稿では、三菱マテリアル CDO(最高デジタル責任者) DX推進部長の端山敦久氏による同社のDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略「MMDX」(三菱マテリアル デジタル・ビジネス・トランスフォーメーション)についての現状と展望を紹介したセッションの内容を抜粋して紹介する。また、端山氏への個別インタビューも併せて掲載する。

顧客接点強化に加えて生産領域の改革もカバー

 三菱マテリアルは「中期経営戦略2030」において、MMDXの推進を強化することを目標として掲げている。

 MMDXは、DX基盤を構築する「実行初期段階フェーズ」(2020年度〜2022年度)、データ基盤の活用推進やグループ全体でのDX活性化を図る「本格稼働フェーズ」(2023年度〜2025年度)、ERPを軸としたDX展開を目指す「効果拡大・継続発展フェーズ」(2026年度〜2030年度)の3段階のフェーズで構成されている。同戦略は2020年度の開始以来、ビジネス付加価値やオペレーション競争力、経営スピードの向上などを目的に展開してきた。

三菱マテリアル CDO DX推進部長の端山敦久氏 三菱マテリアル CDO DX推進部長の端山敦久氏

 ただ端山氏は、「開始当初は顧客接点の改革を主眼に置いていたが、製造系のモノを作っている従業員の間で、モノづくりにDXは関係ないのではないか、と感じさせてしまう部分も少しあった」と振り返る。このことから2022年度から開始した「MMDX2.0」では、生産プロセスに関わる改革強化も盛り込んでいる。具体的には、開発/生産データの活用高度化や、自動化/省人化、検査自動化、製造リードタイム短縮などの改革をテーマとして設定する。同時並行で複数のプロジェクトを実行しており、「実績、効果が出始めているものも幾つかある」(端山氏)ようだ。

 取り組みを支えるデータ活用基盤として、三菱マテリアルは「Snowflake」を採用している。全社システムに蓄積された財務/会計や人事労務、購買情報に加えて、各工場から生産や設備稼働、品質情報、検査画像、個々人が作成した帳票データに加えて社外のマーケットデータなど収集して格納している。

 構成としては、Snowflakeのデータロード機能「Snowpipe」とSnowflakeアカウント間でのデータ共有を実現する「Secure Data Sharing」を組み合わせることで、全社共通データウェアハウスとカンパニー専用データマートを個別に構築し、連携させる形式を実現した。全体でデータの整合性は保ちつつ、各カンパニーがルールや課金額を自由に設定してデータを使える環境にした。

Eスクラップの取引基盤構築とIoTデータの半自動集約化を実現

 端山氏はMMDXの成果の1つとして、Eスクラップの取引プラットフォーム「MEX」(Mitsubishi Materials E-Scrap EXchange)の構築を取り上げた。Eスクラップは携帯電話やPCなど、銅や貴金属などを含んだ電子機器の廃棄板のこと。Eスクラップのリサイクラーや商社がEスクラップの出荷予約や取引/処理状況の確認をWeb上で行える。時間や場所を選ばず取引ができる上、三菱マテリアルによるスクラップの分析結果などを写真や動画と併せて確認できるようになる。

 三菱マテリアルにとっても、金属資源データの在庫管理の精度向上が図れるというメリットがある。過去のデータを基に、リサイクラーや商社から回収したEスクラップに含まれる、金属含有量の見込み値を算出できる仕組みを整備した。

 以前はサプライヤーからの自己申告に基づいており、金属含有量の見込み値と実績値の乖離(かいり)が生じることも多かったが、MEX導入によりこうした課題が解消されつつある。三菱マテリアルはEスクラップ取り扱い数量を2030年度末までに2019年比で50%増となる24万トンにする目標を掲げており、今後もMEXの機能拡充を計画している。

 もう1つのDX事例が、工場設備から収集したIoT(モノのインターネット)データの半自動集約化だ。IoTデータは月間で1工場当たりおよそ50億件に上るが、これらをテスト的に全社共通データウェアハウスに格納している。端山氏は「現在は発生データを全て流し込んでいるが、将来的にはAI(人工知能)を活用するなどで、データを選別、処理した上で格納する仕組みを構築したい」と語った。

 三菱マテリアルにおける今後のDXの取り組みについて、端山氏は「データ活用を社内で広げつつ、社員のマインドも変えていけるような活動にしていく」と語った。

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