ドイツ製造業の危機感が生んだインダストリー4.0、日本はどうすべきか?FAインタビュー(1/3 ページ)

ドイツ貿易・投資振興機関は今回で10回目となる「日独産業フォーラム 2014」を開催。今回はテーマを「インダストリー4.0」とし、同分野の研究の第一人者と見られインダストリー4.0プロジェクトにおける技術イニシアチブ「スマートファクトリーKL」の会長を務めるデトレフ・チュールケ氏が基調講演に登壇した。同氏の基調講演の内容とインタビューをお伝えする。

» 2014年11月12日 16時00分 公開
[三島一孝,MONOist]
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 ドイツ貿易・投資振興機関は2014年11月11日、都内で今回が10回目となる「日独産業フォーラム 2014」を開催。毎回ドイツと日本の産業にとって関心の高いテーマ設定を行っているが、今回はテーマをドイツ発の第4次産業革命とされる「インダストリー4.0」と設定。同分野の研究の第一人者と見られインダストリー4.0プロジェクトにおける技術イニシアチブ「スマートファクトリーKL」の会長を務めるデトレフ・チュールケ(Detlef Zühlke)氏が基調講演に登壇した。本稿では、同氏の基調講演の内容とインタビューをお伝えする。



インターネットの幅広い普及がインダストリー4.0へ

 チュールケ氏は、現在、カイザースラウテルン工科大学をはじめとする4つの研究機関に拠点を置く工学博士で、生産の自動化をはじめとする製造技術を専門としている。その実績を買われ、現在はドイツが進める第4次産業革命「インダストリー4.0」プロジェクトにおける技術イニシアチブ「スマートファクトリーKL」の会長を務めている。

photo インダストリー4.0プロジェクトにおける技術イニシアチブ「スマートファクトリーKL」の会長を務めるデトレフ・チュールケ(Detlef Zühlke)氏

 インダストリー4.0(Industrie 4.0)とは、ドイツ語で第4次産業革命を意味している。第1次産業革命が、18世紀後半に始まった蒸気機関などによる工場の機械化によるものだとすると、第2次産業革命は19世紀後半から始まった電力の活用による大量生産の開始、第3次産業革命は20世紀後半に始まったPLCなど電気とITを組み合わせたオートメーション化だとされている。インダストリー4.0は、それに続く4番目の産業革命と位置付けるものだ。

 具体的には、ICTをフル活用しサイバー空間におけるコンピューティングパワーと現実世界を密接に連携させる「サイバーフィジカルシステム」により、モノづくりの方式を抜本的に効率化するものだとされている(関連記事:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】)。理想像として描いているのは、それぞれの機器の徹底したシンプル化と自律化で、最終的には生産ラインや工場が1つの自律的な生産能力として、販売状況などを考慮して生産調整などを自動で行い、常に最適な生産を維持できるようにする姿が想定されている。

 チュールケ氏は「もともとの前提となったのはインターネットの普及だ。当初はInternet of People(人のインターネット)だったところに、Internet of Things(IoT、モノのインターネット)が普及し、またそれに伴いさまざまなInternet of Services(インターネットサービス)が広がりを見せている。これらの利点を活用した象徴的な製品がスマートフォンだ。これがさらにスマートホームやスマートカーへと広がり、スマートファクトリーへと今つながるようになった」と語る。

 ドイツでは、2010年からこの“スマート化”の動きを背景に、モノづくりに組織的に取り入れる動きを開始。ZVEI(ドイツ電気・電子工業連盟)やVDMA(ドイツ機械工業連盟)、BITKOM(ドイツIT・通信・新メディア産業連合会)などが中心となり、2013年には「プラットフォームインダストリー4.0」という組織を設立している。ドイツ政府の他、学術機関や産業界、などが一体となって、それぞれの課題に対するワーキンググループを作り、活動を続けている。

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