東洋ビジネスエンジニアリングが開催した年次イベント「MCFrameDay 2015」では「ITとものづくりの新時代を展望する」をテーマに、ドイツの「インダストリー4.0」をはじめとした、ICTとモノづくりが融合する世界について紹介した。
東洋ビジネスエンジニアリング(以下、B-EN-G)は2015年2月20日、年次イベントである「MCFrameDay 2015」を開催した。B-EN-Gの年次イベントは2004年から毎年開催されており、従来は自社製品の紹介などを中心に行っていたが、2009年からユーザー企業が役に立つテーマを中心に据えたイベントへと切り替えた。
今回のメインテーマは「日本の製造業に、ものづくりのためのITを」。基調講演に当たるスペシャルトークライブでは「ITとものづくりの新時代を展望する」を掲げ、ドイツの「インダストリー4.0」をはじめ、「IoT/M2M」や「ビッグデータ」など、ICTとの融合が進むモノづくりの新潮流について有識者が語った。
トークライブに参加したのは、インダストリー4.0にも深く関わるドイツのベッコフオートメーションの日本法人社長である川野俊充氏、「つながる工場」の研究や標準化活動に取り組んでいる法政大学 デザイン工学部 教授の西岡靖之氏、B-EN-G 取締役でプロダクト事業本部長の羽田雅一氏の3人で、モデレータは日経BP社技術情報グループ企画編集委員の三好敏氏が務めた。
現在世界で巻き起こっている“新たなモノづくり”で実現を目指しているのは「マスカスタマイゼーション」の実現だ。マスカスタマイゼーションとは、同一品種の大量生産(マスプロダクション)ではなく、個々にカスタマイズされた製品を、大量に低コストで実現すること。これらを大量生産並みの低コストで短いリードタイムで実現できるようにしなければならない。いわば、工場および生産ラインがリアルタイムで自律的に判断して最適な製品を作り上げる仕組みを作るということだ。
これを実現するには、工場においては、生産設備が個々に情報交換し、自動的に変化しながら稼働したり、製品に合わせて生産ラインが変化したりすることが必要になる。さらに、情報の連携面でも、基幹情報システムと工場がネットワークを介して連携(縦の連携)することに加えて、バリューチェーンが情報ネットワークを介して連携することが求められる。
これらを国ぐるみで実現しようと取り組んでいるのがドイツだ。ドイツでは、連邦政府が中心となり、2011年から新たなモノづくりを実現する国家プロジェクト「インダストリー4.0」を推進している。3つの工業団体が事務局となり、ドイツの主要企業および研究機関や大学などがクラスタを形成し、それぞれの技術的、仕組み的な問題に取り組んでいる(関連記事:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】)。
川野氏は「マスカスタマイゼーションが実現できるスマートファクトリーをどう作り上げるかということは製造業において競争力の源泉となり得る部分だ。しかし、ここでも競争領域と非競争領域を考えた場合、通信規格やデータフォーマットなどは非競争領域だといえる。これらをいち早く標準化することで無駄な競争をなくし、ドイツ製造業の競争力を高めるということが狙いの1つだ」と語る。
加えて「スマートファクトリーの機能を搭載した生産財などの製品を輸出することで成長する狙いもある」(川野氏)としており、戦略的に両面的な取り組みを進めてきていることを紹介した。
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