ドイツ機械工業連盟が記者会見を開催。日本とドイツの機械工業の状況について紹介した他、ドイツで盛り上がる「インダストリー4.0」が「特に中小企業の助けになる」(同連盟)との考え方を述べた。
ドイツ機械工業連盟(VDMA)は2014年6月24日、東京都内で記者会見を開催し、ドイツと日本の機械工業の現状について説明した。またドイツで現在盛り上がりを見せている国家プロジェクト「インダストリー4.0」について説明した。
同連盟は1892年に創立。ドイツの機械工業を中心に欧州最大級の産業ネットワークを持つ産業団体で、参加企業は3100社以上にのぼる。参加企業に勤める労働者数の総計は約100万人となり「ドイツの中小企業を代表する組織」の1つに数えられている。同連盟傘下の工業会は機械・製造分野の技術、経済、法律面における問題処理に取り組んでおり、特に経済政策に関するロビー活動に注力している。
会見で同連盟会長のラインホルド・フェステゲ(Dr. Reinhold Festge)氏は「ドイツの機械製造分野は、全てにおいて計画通りというわけではないが、再び自信を回復させつつある」と述べる。
同連盟では、ドイツ国内の機械製造およびプラント建設の2013年の生産額は、年初は前年比2%成長を見込んでいたが、実際は同1.5%減の27兆円だった。一方で、輸出については好調で19兆3000億円に成長しており、2013年の世界の機械製造輸出額の中で、16%のシェアを獲得したという。
また、フェステゲ氏は「ドイツと日本の機械製造分野における企業は非常によく似ている。どちらの国の企業も非常に革新的で、技術的にも高度なものを追求する。また国際的な活動に取り組んでいることが特徴だ」と話す。しかし一方で、ドイツの機械製造分野にとって日本は唯一の貿易赤字国だとフェステゲ氏は指摘する。
「高い品質が必要で、顧客の要求も厳しい日本市場は、機械製造分野の企業にとって非常に難しい市場だ。成長力という面でも大きな拡大が見込めないため、ドイツ企業が大きなリソースを投入してこなかったことも要因だ。しかし、日本企業は一度納得してもらえると、長い協力関係を構築できるといういい面も持っている。日本とドイツの協力を広げていくことで、貿易関係の全体を押し上げることもできると考えている」(フェステゲ氏)。
日本とドイツの協力関係の成功例として注目を集めているのが、ドイツのギルデマイスター(GILDEMEISTER)グループとの提携を強化しているDMG森精機だ。フェステゲ氏は「機械製造分野では日本企業とドイツ企業はもっと協力していくべきだ。その成功例の1つがDMG森精機となる。2社が協力し合うことで技術をより強くし、世界でマーケティングができるようになる。特に世界の変化の動きはより加速しており、1社では全てを賄うことはできなくなりつつある。特に中小企業は厳しい。その意味で中小企業同士でも積極的に協力し合うことが必要になる」と強調する。
また、ドイツ政府の推進するプロジェクト「インダストリー4.0」については「機械製造業界にとっても大きなチャンスだ」とフェステゲ氏は言う。インダストリー4.0とは、従来の生産方法をICT活用によりスマート化し、「スマートファクトリ」の実現を目指す産官学の複合プロジェクトだ。サプライヤー、顧客、ビジネスパートナーなどの全ての生産情報を1つに結合し、工場が自律的な判断によって、ニーズに迅速かつ柔軟に反応して生産する姿を理想と描く(関連記事:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】)。
特に、フェステゲ氏は「インダストリー4.0は、中小企業が大企業と戦える可能性を作るものだ」と力を込める。現在の製造業は、大量生産型のビジネスモデルに縛られている。同じものを大量に作ることでコストを下げ、その下がったコストで利益を稼ぐという形だ。しかし、このビジネスモデルは、多くの需要がある市場で、しかも大規模生産が可能な企業力がなければ、成功できない。「少量多品種のものを高効率に生み出すことができれば、新たなビジネスモデルが広がる可能性がある」(フェステゲ氏)としている。
一方でフェステゲ氏は「インダストリー4.0は、ICT側の決めた論理による支配を阻止することにもつながる」と話す。インダストリー4.0の描く世界では、製造機械にもICTが導入されコンピュータと一体化が進んでいく。この流れの中では機械は大きなICTシステムの一部になっていく。しかし「あくまでも機械が発達してICTを活用するような形を描かなければ、実際のビジネスではうまくいかない。われわれ機械製造業界が中心となって推進していくところに新たな産業の革新につながる価値がある」とフェステゲ氏は語っている。
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