ドイツ政府が主導するモノづくりの戦略的プロジェクト「インダストリー4.0」について解説する本連載。今回はメインテーマに「インダストリー4.0」を据え、盛り上がりを見せたドイツの産業見本市「ハノーバー・メッセ」の出展の様子について、現地を訪問した筆者が紹介する。
ドイツが推進する第4次産業革命「インダストリー4.0(Industrie 4.0、ドイツ語ではIndustryをIndustrieと表記)」を解説する本連載。【前編】では「インダストリー4.0」の概要と描く姿について紹介したが、【中編】では本論を少し休み、「インダストリー4.0」に関する出展が多数行われた「HANNOVER MESSE (ハノーバー・メッセ) 2014」の出展内容についてレポートする。
ハノーバー・メッセはドイツのハノーバーで1947年から開催されている世界最大級の産業見本市である。「ハノーバー・メッセ 2014」は、2014年4月7〜11日に開催され、100カ国以上から20万人近くが訪れた。ハノーバー・メッセは大規模である点が特に有名な展示会だが、今回は5000社を超える出展社が40万m2の展示エリアを構えた。2014年は三菱電機、横河電機、安川電機などを含む30社が日本から出展した。
ハノーバー・メッセでは毎回、開催時期に経済・産業界で注目を集めている国を公式「パートナーカントリー」として指名し、その国を代表する企業が招待され、先進的な技術を展示する。2014年はオランダがその役を担い「グローバルチャレンジ&スマートソリューション」というテーマで250社ものオランダ企業が出展した。ちなみに日本は2007年の日独首脳会議で指名を受け、2008年にハノーバー・メッセのパートナーカントリーとなり「Corporation through Innovation (イノベーションによる協調)」をテーマに150社の日本企業が出展を行った。
ドイツはビジネスにおいて展示会が重要視されている国だといわれている。これにはドイツ中からどこでも自動車高速道路「Autobahn(アウトバーン)」で日帰りで移動できる利便性がある。さらに人と直接会い、製品や装置に直接触れることが、意思決定の重要な要素として根付いていることも要因だ。狭い国土に人口が密集する日本とある部分では似ていて、3つのタイムゾーンをまたぐ広大な大国である米国とは対照的なところがある。
また、展示会が産官学連携の場として機能しているところは日本も同じだが、ドイツでは「官」の関わりが強いのが特徴だ。ハノーバー・メッセには、政府要人が定期的に視察に訪れる。例えば2014年は、ドイツ首相のアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)氏がパートナーカントリーであるオランダ首相のマルク・ルッテ(Mark Rutte)氏と共に、初日から主要出展社を視察したことが話題となった。首相達が企業ブースを訪れる前はブースに入場規制が掛かり、SPや報道陣を含め100人規模の集団がやってくる。そのため、会場は物々しい雰囲気となるのが筆者にとっては新鮮な体験だった。
ちなみにメルケル氏は各ブースを回りながら、「インダストリー4.0」プロジェクトの施策が、効果を挙げているのか直接ヒアリングしているのだという。そのため、参画企業は、成果を製品などの目に見える形にすべく、展示会に合わせて技術開発を進めてきた背景がある。
日本では首相の安倍晋三氏が「ニコニコ超会議3」(主催:ニコニコ超会議 実行委員会)に視察に訪れ話題となったが(関連記事:「ニコニコ超会議3」開幕 安倍首相も来場)、同じように産業系の展示会にも積極的に参加してもらうことを、業界人としては期待したいところだ。
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