ハノーバー・メッセの会場を歩くと、至る所に「Industrie 4.0」の文字が並び、それに関連するカタログが配布されている。主催社であるDeutche Messe(ドイツメッセ)も、開催期間中に毎日3回ずつ関連5社のブースを巡る「インダストリー4.0 ビジターツアー」を組んでいたほどだ。2時間にも及ぶ負担の大きなツアーながら、各回多くの参加者を集めており、関心の高さがうかがえる。
【前編】でも紹介した「Industrie 4.0 Platform」が支持する最大のクラスタ「It's OWL(Intelligent Technical Systems OstWestfalenLippe or East-Westphalia-Lippe)」も大規模なブースを構えていた。
ドイツの東Westfalen地方でプロジェクトに参加する174社のうち38社が出展した。クラウドサービスなどの上位系のシステムと連携するソリューションや、製造レシピを動的に変更するシステム、装置間での情報の授受、リアルタイムでの状態監視やエネルギーモニタリングなどに関連する技術が多く展示されていた。システムの呼び方は各社によってそれぞれ異なるものの「サイバーフィジカルシステム」を強く意識した展示がほとんどだった。
こうした要素を「全部入り」にしたシステムの1つの例として、ベッコフが展示した「スマートファクトリ」デモを紹介しよう。【前編】で紹介した、ドイツのnobilia(ノビリア)のように、生産品が全品仕様が異なるということを想定し、その生産システムをシンプルに抽象化。さらにそれをクラウドサービスと連携させ、スマートグラスによる監視と制御を行うというものだ。全てのシステムを単一のコントローラーに統合したことが特徴となる。
トレイに置かれた5種類の材料が、レシピに従ってデルタロボットでピックされ搬送機に載せられる。載せられた材料は、加工の種類によって異なるドリルステーションに運ばれる。指定の加工を受けた材料はその後、センサーによる検査システムで検品・計量された後、再びデルタロボットで搬出されるという内容だ。
ドリルの振動やロボット・搬送システムのエネルギー消費履歴などが常に監視され、コントロールパネルに状況を表示をしたり、工程に割り込み・中止指令を動的に入れることなどが可能だ。さらに、クラウドを通じてタブレット端末やスマートグラスでこれらの監視・制御が可能となっている。そのため、Google Glassで読み取ったQRコードで、徒歩15分も離れた別ホールからデモシステムを制御するというなかなか先進的な体験が味わえた。
製造や保守の現場におけるスマートグラスの活用については、さまざまな実証実験も進んでいる(関連記事:Google Glassで飛行機を整備、JALとNRIがウェアラブルデバイス活用の実証実験)。「インダストリー4.0」の世界として、ウェアラブルデバイスによる、工場の遠隔監視や遠隔操作もまさに現実のものになってくるだろう。
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