電気自動車(EV)ベンチャーのTesla Motors(以下、テスラ)は、米国南西部に「Gigafactory(ギガファクトリー)」と呼ぶ大規模なリチウムイオン電池工場を建設する方針を明らかにした。フル稼働に入る2020年の年間生産規模は、2013年における世界全体のリチウムイオン電池セルの生産規模を上回る35GWhを計画している。
電気自動車(EV)ベンチャーのTesla Motors(以下、テスラ)は2014年2月26日(米国時間)、転換社債によって16億米ドルを調達する計画を発表するとともに、米国南西部に「Gigafactory(ギガファクトリー)」と呼ぶ大規模なリチウムイオン電池工場を建設する方針を明らかにした。
ギガファクトリーでは、同社が販売するEV「モデルS」などに搭載されている、18650サイズ(直径18×長さ65mm)のリチウムイオン電池セルと、その電池セルを使った電池パックをこれまでにない規模で大量に生産する。2017年に稼働を開始し、2020年にはフル生産に入る計画。フル生産時の年間生産規模は、電池セルで35GWh相当、電池パックで50GWh相当に達するという。
工場の設置面積は1000万平方フィート(約93万m2)以上、建屋は2階建てとなる見込み。太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを用いて生産を行う方針。従業員数はフル稼働時で最大6500人を見込む。
電池セルの年間35GWhという生産規模は、2013年における世界全体のリチウムイオン電池セルの生産規模を上回る。総投資額は40億〜50億米ドルになるが、テスラが直接投資するのは20億米ドル程度にとどまる。残りの20億〜30億米ドルは、パナソニックなどのパートナー企業が負担することになる。
これまでにテスラが販売してきた、スポーツカーEVの「ロードスター」や高級セダンEVのモデルSは、価格が800万円以上もする高級車だった。しかし、テスラの真の目標は、一般消費者が入手可能な価格のEVを2017年に投入することである。ギガファクトリーの建設計画は、いわゆる“規模の経済”によって、EVの価格低減の最大の課題となっているリチウムイオン電池のコストを大幅に削減するためだ。
同社は、ギガファクトリーの稼働によって電池セルのコストが大幅に削減され、2017年末には電池パックの1kWh当たりの価格を現在の30%あたりまで低減できる可能性があるとしている。そして、テスラのEVの年間生産台数は、2014年の計画が3万5000台であるのに対して、2020年には約14倍の50万台に達する見込みである。
先述した通り、ギガファクトリーの電池パックの年間生産規模は50GWhである。一方、2020年におけるテスラのEVの年間生産台数は50万台。つまり、この時点のテスラのEVは1台当たり容量100kWhの電池パックを搭載している計算になる。モデルSの85kWhモデルの走行距離が300マイル(約482km)であることを考えると、単純計算でも走行距離は約350マイル(約563km)まで伸びることになる。
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