電気自動車のフォーミュラカーレース「フォーミュラE」の2014〜2015年シーズンが幕を閉じた。フォーミュラEの技術パートナーであるクアルコムは、次シーズンでレースカーへのワイヤレス給電導入を目指しているが容易ではなさそうだ。しかしその意気込みを示すために“小さな実験”を行っている。
電気自動車のフォーミュラカーレース「フォーミュラE」の2014〜2015年シーズンが、2015年6月28日に英国ロンドンで幕を閉じた。全11レースが開催され、ドライバーズ・チャンピオンシップでは、ネクストEV TCRチームのネルソン・ピケJr.氏が、e.ダムス ルノーチームのセバスチャン・ブエミ氏を1ポイント差で抑え優勝した。
初のシーズンとなったフォーミュラEだが、その技術パートナーとなっているのが、スマートフォン向けプロセッサの「Snapdragon」で知られるQualcomm(クアルコム)である。
Snapdragonほど有名ではないものの、クアルコムは自動車向けワイヤレス給電技術「Qualcomm Halo(以下、Halo)」を展開している。同社にとってフォーミュラEは、電気自動車にいずれは必要になるであろうワイヤレス給電技術におけるHaloの優位性を示すための場所だ。
一般的な内燃機関車のレースカーでは、燃料が少なくなってきたらピットで給油を行う。この給油と同様に、フォーミュラEのレースカーのバッテリーの容量が減少したときに、Haloによるワイヤレス給電で対応したいとクアルコムは考えている。
しかし2014〜2015年シーズンのフォーミュラEでは、レースカーにHaloを適用することはできなかった。レースカーをドライバー1人当たり2台用意しておき、レース中にバッテリーの容量が減少したらピットでレースカーを乗り換えるという方式が採用されたのだ。
クアルコムのHaloの見せ場は、セーフティカーに採用したプラグインハイブリッド車「BMW i8」と、メディカルカーに採用した「BMW i3」のワイヤレス給電に採用されたところだけだった。確かに、セーフティカーやメディカルカーのように、突然出動しなければならない車両にとって、充電のために電源コネクタを差し込んでおく必要のないワイヤレス給電は有用だ。
だがクアルコムにとってセーフティカーやメディカルカーへのHaloの採用は第1段階にすぎない。やはり、フォーミュラEのレースカーで利用されてこそ、技術パートナーとなった価値が得られるというもの。同社は近々、フォーミュラEを統括するFIA(国際自動車連盟)や参加チームとともに、技術面やレギュレーション面での課題を克服するためのテストを行う方針である。
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