「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する新連載「イマドキのフナデジ!」を始めます。第1回で取り上げるのは、海上保安庁の“最先端”船舶である大型測量船の最新モデル「平洋」と「光洋」だ。
MONOistではこれまで、連載「船も『CASE』」において、自動車のCASE(コネクテッド、自動運転、サービス/シェアリング、電動化)に対応する船舶の最新デジタル技術の動向を紹介してきました。今回から、「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する新連載「イマドキのフナデジ!」を始めます。
海上保安庁の“最先端”船舶として、多くの人が関心を寄せるのは警備救難業務に用いられる「ヘリコプター搭載型大型巡視船」や「ヘリ甲板付き大型巡視船」かもしれない。しかし、今回取り上げる“測量船”も、海洋科学調査という観点で最新の技術を導入した“イマドキのフナデジ!”にふさわしい船といえる。
海上保安庁大型測量船の最新モデルが“平洋型”だ(予算要求における正式型名は「大型測量船 HL型」)。最新鋭と言ったものの、1番船(平成28年度第二次補正予算計画船)「平洋」の就役は2020年1月29日、2番船(平成30年度当初予算計画船)「光洋」の就役は2021年3月16日と、完成してから既に5年が経過している。海上保安庁の大型測量船としては1998年就役(平成7年度第二次補正予算整備船)の「昭洋」以来、21年ぶりの新造船として登場した。
総トン数は約4000トンで全長が103m、最大幅は約16.8m。これを前型の昭洋(全長98m、最大幅15.2m、総トン数3128トン)と比べると全長、最大幅が“微増”なのに船の容積を示す総トン数が3割近く増えている。それだけ船内に収納できる観測機器が増やせることになる。
観測業務において測定位置の正確さは観測データ精度に大きく影響する。観測内容によっては同じ位置に居続ける=定点保持も必要になる。しかし、海は常に風や潮流の影響で予想できない複雑な運動をしており、海を航行する測量船も不規則な航跡を描く。このようなときでも、測量船は正確な測位と安定した航行が求められる。潮流や風の影響を受けながら一定の針路を維持する必要があり、低速時でも精密な操船が不可欠だ。そのため平洋型では、警備救難に適した巡視船と異なる推進システムを搭載する。
平洋型では、推進機構にディーゼルエンジンで発電した電力を用いてモーターを回し、そのモーターで推進器を駆動する電気推進方式を採用するとともに、推進器には「アジマススラスター」を組み合わせている。
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