先日行われた組み込み技術の展示会「Embedded Technology 2009(ET2009)」でも、Android関連の展示が非常に目立っていた。同社は、Androidビジネスの“新規参入組”として、ET2009の会場でも多くの来場者の注目を集めていた。
同社のLinux/Android事業に関しては、2009年7月に組み込みLinuxベンダのEmbedded Alleyを買収したことが記憶に新しい。
「われわれの掲げているテーマは“Embedding Excitement Beyond Mobile Phones”。つまり“携帯電話を超越するような組み込み機器”に注力していく。そしてメンターは、この有望な市場にソフトウェアIP、ソフトウェアサービス、ソフトウェア開発ツールの3つを軸に展開していく」(マギリヴレイ氏)。
携帯電話用に設計されたAndroidは、情報アクセスのしやすさ、優れたUI、クラウドコネクティビティによる開発のしやすさなどの特徴を持つ。マギリヴレイ氏は、これらのAndroidの特徴を駆使すれば非常にユニークな組み込み端末が作れると語る。
「APIもそろっており、洗練された機能もある。ただしこれらは、携帯電話に特化されている。このAndroidの恩恵をほかのプラットフォームでも享受できればいいのだが、そうたやすくはない。携帯電話用に設計されたAndroid、それをほかのプラットフォームに活用するのにも、メンターの3つの軸(IP/サービス/開発ツール)の方針が力を発揮するだろう」(マギリヴレイ氏)。
また同社は「Android/Linux」とRTOS「Nucleus」を融合させたマルチコア/マルチOSソリューションを提案する。
「RTOSのNucleusはリアルタイム性、データ処理の最適化、認証済みソフトウェアスタックなどの特徴があり、一方のAndroid/Linuxは優れたユーザーアプリケーションフレームワークと膨大なミドルウェアといったエコシステムがある。この2つのOSは好対照。同様の取り組みは、Wind Riverなども手がけてきたが、Intel傘下になることで、制約も出てくるだろう。このような2つのOSに自由に取り組めるのは独立した企業であるメンターだけ」(マギリヴレイ氏)。
マギリヴレイ氏は、マルチコア/マルチOSによってAndroidとRTOSを組み合わせることで、医療や自動車、白モノ家電といった携帯電話以外の分野でのエコシステムが可能になると語る。特に家電やSTBなどマルチメディア系の製品分野に期待したいとのことだ。
近年、組み込み機器でも3DのUIを持ったデバイスが増えている。そんなニーズに応えたのが、同社のGUI設計/開発ツール「Nucleus Graphics」だ。3D/アニメーション/フリックなどのリッチなUIをプログラミングすることなく、ドラッグ&ドロップ形式で開発できる。従来のプログラミング主体の開発方法に比べて、直感的に思いどおりのデザインが短時間にできるのが特徴だ。
「Nucleus Graphicsの操作画面では、ドラフターのようにユーザーが好きな3Dコンポーネントをドラッグ&ドロップで置いて、どう動作するかを決めると、画面右側では3D UIが実際にどう表示されるかの動作確認が逐次行え、非常に簡単に3D UIが作れる。これをAndroid搭載製品のGUIに使えば、簡単にオリジナリティあふれる3D UI搭載製品が作れる」(マギリヴレイ氏)。
Android、マルチコア/マルチOS、3D UI――。この3つのカテゴリに注力することで、組み込みソフトに大きくコミットしていくという同社。
「3つの軸、実際に普及させていくには、われわれだけではだめで、半導体メーカーなどハードベンダとの連携なくしては、なし得ない。特にAndroidのようなオープンソースなら、協力体制は必須。われわれは、RTOSから統合開発環境、さらに組み込み機器搭載UI開発までをトータルに支援するソリューションを提供してきた。今後は、既存の強みにオープンソースの柔軟性や将来性をプラスし、顧客の多様なニーズに対応していきたい」(マギリヴレイ氏)。
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