最近、組み込み分野への進出が目覚ましいOpera Software。同社のブラウザが採用されるのはなぜなのか。同社が語る戦略から、その理由が見えてきた。
2006年になってから、にわかにモバイル/組み込み関連分野で「Opera」(編注)の名前を目にする機会が増えてきた。2005年以降、急速に進む「携帯電話へのフルブラウザ搭載」というトレンドに加え、Operaブラウザならではの特徴を生かしたユニークな端末への搭載も進んでいる。
まずはOperaの製品を整理しておこう。Operaブラウザには、
という3つのプロダクトラインがある。このうち後者の2つが、モバイル/組み込み向けの製品である。
Opera for Mobileには、携帯電話やPHS上で動作する「Opera Mobile」やJavaアプリケーションの「Opera Mini」などが含まれる。Opera Mobileは、ハードウェアリソースが比較的豊富な携帯電話やPHSの上でネイティブ動作するフルブラウザである。Opera独自の「スモール・スクリーン・レンダリング技術」により、携帯電話の狭い液晶画面の幅に合わせてWebサイトを表示する。これにより、立てスクロールのみでWebサイトを閲覧できる。
Opera Miniは、ハードウェアリソースがより限定された環境でのWebブラウズを実現するために開発されたJavaアプリケーションである。ワールドワイドで見た場合、日本の携帯電話のようにOpera Mobileが動作するほど潤沢なハードウェアリソースを持つ例はむしろまれで、多くはスペックも低く帯域幅も狭い携帯電話である。こうした端末でHTMLのレンダリングなどの処理を行うのは無理がある。そこで、HTMLレンダリングなど負荷が掛かる処理は「Opera Miniサーバ」というプロキシサーバが文字通り代行し、Opera Miniサーバから送られてきたデータを端末側のJavaアプリケーションが表示するという仕組みだ。非力な端末でも、Java VMさえあればOperaのブラウザ技術を享受できるというわけだ。
Opera for Devicesは、“非携帯”“非PC”製品を前提に開発されている組み込み向けWebブラウザである。TVなどの家電製品やセットトップボックスといったコンシューマエレクトロニクス分野やキオスク端末など、多方面で幅広く利用されている。Operaの現在の主力分野はモバイルだが、今後はこのデバイス部門が大きく伸びていくと考えられる。同社は今後もデバイス部門の強化を進め、「いずれOpera for MobileとOpera for Devicesの比率が半々になるくらいまで上げていきたい」とOpera Software日本法人代表の冨田龍起氏は語る。
一方で、現在も全体の3割を占めるOpera for Desktopの開発を継続して進めていくという。それはなぜか。
Operaの製品群は、携帯電話やゲーム機で動作するOpera for Mobile/DevicesからWindowsやLinux上で動作するOpera for Desktopまで、コアとなるエンジン部分はすべて同じである。つまり、Opera for Desktopで開発した技術がOpera for Mobile/Devicesにも転用されるということである。インターネットの世界において、最新技術がいち早く導入されるのは、やはりデスクトップつまりPC環境だ。Opera for Desktopの開発によって最先端の技術動向にもまれ、そこで蓄積したノウハウをOpera for Mobile/Devicesに生かすのが同社の戦略というわけだ。
Opera for Desktopは、隠れたもう1つの役割を果たしているようだ。この後でOperaブラウザの採用事例を紹介するが、その多くがセットメーカーからOperaに対して「Operaブラウザを使いたい」とコンタクトしてきたことが始まりであるという。そこには、PCでOpera for Desktopを使っているエンジニアの意向が大きく働いている。つまり、Opera for Desktop自体が強力な営業ツールとなっているのである。これは、組み込み専業ではなくPCの分野も手掛けているOperaならではの強みといえるだろう。
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