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» 2006年08月23日 00時00分 公開

Opera採用の影に最強の営業ツールあり組み込み企業最前線 − Opera Software −(2/2 ページ)

[工藤 淳 オフィスローグ,@IT MONOist]
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ニンテンドーDSブラウザーが次のビジネスへ

 任天堂との提携は、Operaの名を非PC分野にもとどろかせることになる。

 2006年2月、任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」用のOperaブラウザ「ニンテンドーDSブラウザー」が発表された(7月24日販売開始)。ニンテンドーDSブラウザーはOpera for Devicesベースの製品で、プログラムが収録されているDSカードと拡張カード(増設メモリ)で構成されている。

 ニンテンドーDSブラウザーによって生まれた縁は、さらなるビジネスにつながった。2006年後半に発表が予定されている任天堂の新世代ゲーム機「Wii」用Operaブラウザの開発が決定したのだ。Wiiは「Wiiコネクト24」という機能により、インターネットに常時接続が可能だ。こうした環境下では、ブラウザがユーザーインターフェイスとして、またそのユーザーインターフェイス上で動くアプリケーションとして、大きな可能性を持ってくる。「TVのデジタル化やiPodなどのデジタル音楽プレーヤの普及などを見ていると、Webブラウザはインターネットアクセスツールとしてだけではなく、Webベースのユーザーインターフェイスを構築するパーツとして、大きな可能性を秘めていると考えている」(冨田氏)。

 さらに、KDDIの3G携帯電話全10機種への搭載発表、Windows Mobile用のOperaブラウザ「Opera Mobile 8.6 for Windows Mobile」リリースなどのニュースが相次いだ。興味深いのは、ウィルコムの「W-ZERO3[es]」にOpera Mobile 8.6がプリインストールされたことである。Windows Mobileの標準ブラウザが搭載されている「W-ZERO3[es]」に、Opera Mobile 8.6が“推奨ブラウザ”としてわざわざ追加されたのだ。

 Opera Mobile 8.6は、Pocket PC向けOpera Mobileとして初めてFlashに対応した製品であることから、今回の採用にはよりアクティブ化するインターネットコンテンツに対応できるフルブラウザ環境を欲する市場からの要求がうかがわれる。

 「たとえ携帯端末であっても『フルブラウザ』と名乗っているからには、デスクトップPCと同じ機能をユーザーは期待する。だが、なかなか完全に同じレベルとはいかない。しかもWindows MobileのInternet Explorerはデスクトップ版よりも古いバージョンをベースに開発されているので、最新のテクノロジをサポートし切れていない。「W-ZERO3[es]」の高機能なハードウェアに合った、最新のインターネット技術をフルに生かせるWebブラウザが求められていた」(冨田氏)。


組み込み分野でもWebテクノロジが必要

 「Webブラウザを中心としたユーザーインターフェイス開発」という観点では、現在の組み込み分野は過渡期にあると同社は考えている。Webテクノロジは高度化し、インターフェイスとしてできないことはほとんどないレベルにまで達している。そこでユーザーインターフェイスをWebブラウザベースで作ると、従来のようにネイティブでインターフェイスを作り込む必要はなくなる。これは単純に考えれば工数の節約になるはずだが、開発エンジニアにとっては、従来とはまったく異なる技術が要求されることを意味する。

ウィジェット機能の一例 画面2 ウィジェット機能の一例。組み込み機器でも、Operaブラウザを使えばこうしたユーザーインターフェイスを簡単に実現できる

 「Webベースになると、これまでの開発手法とは異なることから、心理的な抵抗は若干あると思う。またセットメーカーさんからすれば、これまでは決まったコンテンツを表示すればよかったのが、Webベースになると、いろいろなコンテンツを表示できる分、幅広い技術要件に応える必要が生じる。Operaとしては、Webベースへの移行を容易にするツール群の充実が必要になる」(冨田氏)。

 Operaは今後、SDK(Software Development Kit)やデスクトップブラウザなどの製品提供をより積極的に行っていく方針だ(これまでもSDKの提供は行われている)。Webベースのインターフェイスへの転換・改善を図ることで、タイム・ツー・マーケットを削減するだけでなく、サーバ側で持っている情報をシームレスにブラウザで提供できる、本当の意味で開かれたインターネットブラウジング環境を実現していきたいという。

 こうした試みは、すでに実現されつつある。例えば、PC向けのWeb開発ツール「Adobe Creative Suite」に含まれるオーサリングツール「Adobe GoLive」のエンジンとしてOperaブラウザが組み込まれている。スモール・スクリーン・レンダリング技術をサポートするOperaのレンダリングエンジンを利用することで、さまざまな環境に最適化したコンテンツをリアルタイムでプレビューできる。例えば、HTMLでページをコーディングしながら、携帯電話の場合とデスクトップPCの場合それぞれのプレビューを切り替えながら開発を進めることができるという。

スモール・スクリーン・レンダリングで縮小したWebページ 画面3 スモール・スクリーン・レンダリングで縮小したWebページ。画像も適切なサイズに調整されている。同じ縮小率の画面1と比較すると面白い

「PC用から組み込み用まであるのはOperaだけ」

 今後目指すべき方向について、Operaでは組み込みか携帯電話かもしくはPCかといった分類には特にこだわっていないという。あくまでWebブラウザを開発しているベンダという立場に立って、マーケットやユーザーごとに求められるものを、その時々に合わせて提供していきたいと考えているからだ。

 現在インターネットの中で起こりつつある動きを考えると、そうしたよりニュートラルかつフレキシブルなスタンスは重要だと考えられる。インターネット上のコンテンツはかつてのようにスタティックなものだけではない。Google Mapなどのように、高度なアプリケーションがインターネット上でいくつも提供され始めており、今後こうしたダイナミックなコンテンツはますます増えていくのは想像に難くない。Webベースへの移行が進んでくれば、その波は間違いなく組み込みソフトウェアや携帯電話、家電製品へも波及してくる。Operaはこうした来るべき時代に備えて、W3CやMozilla Foundationといった団体と共同で仕様策定などを進めているという。

 「Webブラウザを開発している会社は世界に何社かあるが、その中でPCと同時に携帯電話や家電などの組み込み用途も手掛けているのはOperaだけ。そうした中で、いかに新しいインターネットのイノベーションを組み込み系、特に家電や携帯電話に提供できるか。われわれにとって大きなやりがいのあるチャレンジと考えている」(冨田氏)。

 ノルウェー本国で2004年2月に株式公開された当時は100名だった社員が、現在は300名に急成長。さらに日本法人が2005年2月に設立され、日本での展開も本格化してきたOpera。スタッフの約9割が開発、品質管理、テクニカルコンサルタントやプロジェクトマネージャといった技術関連に従事する“技術志向”を生かし、今後も組み込みマーケットに取り組んでいくという意気込みにぜひ期待したい。

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