Rapidusと連携深めるテンストレント、東京オフィスで半導体エンジニアを積極育成人工知能ニュース(1/2 ページ)

テンストレントが新たに入居した東京オフィスで会見を開き、来日した同社 CEOのジム・ケラー氏が2nmプロセス半導体の製造で協業しているRapidusとの関係や、日本国内における今後の取り組みなどについて説明した。

» 2025年04月18日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 テンストレント(Tenstorrent)は2025年4月17日、新たに入居した東京オフィス(東京都港区)で会見を開き、来日した同社 CEOのジム・ケラー(Jim Keller)氏が2nmプロセス半導体の製造で協業しているRapidusとの関係や、日本国内における今後の取り組みなどについて説明した。

テンストレントのジム・ケラー氏 テンストレントのジム・ケラー氏[クリックで拡大]

 ケラー氏は「新オフィスでは、半導体設計やAIソフト開発などを担うエンジニアを積極的に雇用し育成していく。約80人が入居できるが、将来的に拡張することも視野に入れている。先日、Rapidusの工場を訪問し、パイロットラインが順調に立ち上がっていることを確認できた。2025年7月に操業を開始すると聞いているので、それまでに当社の半導体設計が間に合うように取り組みを進めたい」と語る。

 テンストレントは、AI(人工知能)アクセラレータやRISC-VベースのCPU、チップレット技術を手掛ける2016年創業のベンチャー企業だ。2023年1月に設立した日本法人のテンストレントジャパンの現在の従業員数は約15人となっている。

 テンストレントの日本国内における活動ではRapidusとの協業が大きな比重を占めている。まず両社は2023年11月、2nmプロセスのロジック半導体をベースにしたAIエッジデバイス領域での半導体IPのパートナーシップについて合意した。続いて2024年2月には、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発」における「2nm世代半導体技術によるエッジAIアクセラレータの開発」をLSTC(最先端半導体技術センター)が受託し、その再委託先としてRapidusとテンストレントが選ばれている。

テンストレントはRapidusとともに「2nm世代半導体技術によるエッジAIアクセラレータの開発」の再委託先に選ばれた テンストレントはRapidusとともに「2nm世代半導体技術によるエッジAIアクセラレータの開発」の再委託先に選ばれた[クリックで拡大] 出所:テンストレント

 ケラー氏は「これまでのキャリアで半導体工場の立ち上げは何度も経験してきたが、Rapidusの立ち上げにもわくわくしている。Rapidus側の2nmプロセスの立ち上げと同時並行でトランジスタプロセスの合わせ込みつつ半導体設計も同時並行で進めるなど、これらはとても大変なタスクだが、これまでの進捗を見る限り間に合わせられる確信がある」と強調する。

 Rapidus側で用意しているPDK(Process Design Kit)は現在バージョン0.5の段階だが、テンストレントとRapidusで綿密に連携して、今後0.7、0.9そして1.0とバージョンアップを重ねていく方針。2025年夏のパイロットライン立ち上げ時にPDKの見極めを行い、「2025年内には最初の半導体についてテープアウト(半導体設計が完了すること)させたい」(ケラー氏)としている。

Rapidusの工場に半導体プロセス開発エンジニアを配置する可能性も

 テンストレントは、経済産業省やNEDO、LTSCが推進する国内における半導体分野の人材育成の取り組みにも深く関わっている。2024年11月には、NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/人材育成(委託)」における「最先端デジタルSoC設計人材育成」をLSTCとともに受託している。

 この人材育成の取り組みは初級、中級、上級の3つのコースに分かれており、上級コースは先端半導体設計を実践しているテンストレントの拠点でOJTを行う予定になっている。新たな東京オフィスは、このOJTも視野に入れて拡張が行われた。当初3カ月は東京オフィスで基礎的なトレーニングを行った後、その後1〜2年間、サンタクララやオースティンといったテンストレントの米国拠点でOJTを行うという。NEDOからの受託内容では5年間で最大200人を上級コースで育成することになる。

テンストレントが受託した「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/人材育成(委託)」の概要 テンストレントが受託した「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/人材育成(委託)」の概要[クリックで拡大] 出所:テンストレント

 ケラー氏は「このインターンによるOJTを含めて東京オフィスではエンジニアを積極的に育成していく。育成したエンジニアは、東京オフィス以外にもサンタクララやオースティンなどでも活躍してもらう可能性もある。サンタクララには高い技能を持つ日本人の半導体エンジニアもいるので、東京オフィスに移ってもらうことも考えている。これらの他、Rapidusの工場にテンストレントの半導体プロセス開発エンジニアを配置する可能性もある。TSMCやサムスンでは難しいが、Rapidusとの関係性があるからできることだ」と述べる。

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