イチから全部作ってみよう(19)今までの知識を総動員して要求仕様書を作成する山浦恒央の“くみこみ”な話(188)(1/3 ページ)

ソフトウェア開発の全工程を学ぶ新シリーズ「イチから全部作ってみよう」。第19回は、シリーズ第18回まで解説してきた知識を活用してECサイトの要求仕様書を作成してみよう。

» 2025年04月17日 10時00分 公開

1.はじめに

 山浦恒央の“くみこみ”な話の連載第170回から、入門者をターゲットとして、「イチから全部作ってみよう」というシリーズを始めました。このシリーズでは、多岐にわたるソフトウェア開発の最初から最後まで、すなわち、要求仕様の定義、設計書の作成、コーディング、デバッグ、テスト、保守までの「開発フェーズ」の全プロセスを具体的に理解、経験することを目的にしています。

さまざまなワインボトル ※写真はイメージです

 本連載は、ワインのECサイトを題材にソフトウェア開発の全工程を学ぶことを目的としています。しかし、いきなりECサイトを設計するのは難しいので、発注側から要望を確認し、要求仕様書を作成するまでの一連の手順のイメージを把握してもらうために、シリーズ第10回に当たる連載第179回から、まずは学生時代の文化祭などでなじみがあるであろう「学園祭でのタコ焼き屋の出店」を例にした説明を行いました。ここまでで要求仕様フェーズのイメージはつかめたでしょうか?

 今回からは話をワインのECサイトに戻し、今までの知識を活用して要求仕様書を作成します。時間がある方は、過去18回分のバックナンバーをサラッと読んでみてください。

⇒連載「山浦恒央の“くみこみ”な話」バックナンバー

2.要求仕様フェーズの振り返り

 要求仕様フェーズの流れを図1から再確認します。

図1 図1 要求仕様フェーズの流れ[クリックで拡大]

 図1は、要求仕様フェーズの流れを示したものです。下記に文書形式で整理します。

  • (1)発注側(顧客)が、商品企画を検討する
  • (2)開発側は、発注側の要望をヒアリングし、要求仕様書を作成する(セルフチェックも忘れないこと)
  • (3)要求仕様書の作成完了後、開発側と顧客を交えてレビューする
  • (4)レビュー時に不備が見つかった場合は、要求仕様書を修正する
  • (5)レビューが無事完了すると、要求仕様フェーズ完了とする

 このように、要求仕様書をきっちり作成していくことが大事です。今回は、今までの話を総動員して、ECサイトの要求仕様書を作成しましょう。

3.お題に取り組む準備

 「いきなり要求仕様書を書いて」というのも乱暴なので、要求仕様書のひな型となる章立てを提示します。※1)

※1)実開発では、機能要求以外にも、「応答性能を何秒とする」「同時接続数を1000人とする」「PCとスマートフォンに対応する」といった機能以外の話も記述するのですが、話が複雑になるので、まずは無視します(考えてもよいですが)。

(1)概要

 このソフトウェアの目的や利用イメージなどを数行でまとめる(いきなり、細かく書くと複雑になり、理解できなくなります)。

(ア)背景

 このソフトウェアを作成する背景を記述する。

(イ)目的

 このソフトウェアを使用する目的を記述する。

(ウ)用語の定義

 用語定義が必要な場合は記述する。

(2)関連資料

 別途参照する資料があれば記述する(今回は記述しなくてよい)。

(3)機能要求

(ア)機能構成

 機能要求の全体構成がわかるものを記述・図示する(例:機能分割の図など)。

(イ)機能一覧

 必要とする機能の一覧を整理して記述する。

(4)制約条件

 使用上または開発上の制約を記述する。

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