PCの世界では不動の地位を築いたマイクロソフト。その一方で、組み込み分野でも着実に実績を上げていることはあまり知られていない。「より良い部品メーカー」を目指す同社の組み込み戦略とは?
マイクロソフトの組み込みソフトウェアと聞いて、「Windows XP Embedded」や「Windows Mobile」という名称がすぐに浮かぶ人はどれくらいいるだろうか。マイクロソフトが組み込みソフトウェアのような、“縁の下の力持ち”的な分野にも積極展開しているとあらためて聞くと、意外な印象を受ける人は少なくないのではないだろうか。
そうした人のために、まず簡単に同社の組み込み向け製品を整理してみよう。さまざまな製品があるが、それらは「Windows Embedded」と総称される(図1)。
Windows Embeddedには、「Windows CE」と「Windows XP Embedded」という2種類のOSがあり、それぞれに応用製品が存在する。そして、Windows CEを利用しているのが、「Windows Mobile」や「Windows Automotive」であり、Windows XP Embeddedを利用しているのが「Windows Embedded for Point of Service(WEPOS)」だ。また、Windows Mobileには特定分野に特化したさらなる派生製品も存在する。ユーザーインターフェイスが不要な用途からリッチなGUIが要求される分野まで、Windows Embeddedには一通りの選択肢が用意されているのである。
組み込み分野では、採用されているOSや技術が非公開であることも珍しくない。そのためあまり意識することはないが、実際にはさまざまな分野でマイクロソフト製品が利用されている。
日本国内におけるWindows Embedded採用製品の出荷量は、2005年7月から2006年6月までの1年間で100万台を突破。マイクロソフト モバイル&エンベデッドデバイス本部でエグゼクティブプロダクトマネージャを務める松岡正人氏によると、JEITA(社団法人 電子情報技術産業協会)のレポートではPOSデバイスのOSのほとんどがWindowsで占められているという。現在、国内には約14〜15万台のPOS機器があり、このうちの78%に当たる約10〜11万台がWindowsを採用していると自信をにじませる。
さらに、2006年は次世代組み込みOSであるWindows CE 6のリリースという、同社のWindows Embedded部門にとって重要な節目が控えている。ラスベガスで開催された開発者およびパートナー向けのイベント「Microsoft Mobile & Embedded Dev Con 2006」で発表されたWindows CE 6は、OS中核アーキテクチャの再デザイン、同時稼働可能なプロセス数の拡張、各種ツールの統合といった強化・変更が施され、多様な分野の組み込みソフトウェアやデバイスを開発するうえで、大きなアドバンテージを獲得した。
2006年6月に東京ビッグサイトで開催された「組み込みシステム開発技術展(ESEC)」では、マイクロソフトのパートナー12社の各ブースで、実機によるWindows CE 6ベータ版のデモが行われた。Windows CE 6の製品版が登場するころ(2006年秋)には、各社からWindows CE 6に正式対応した評価ボードの提供が開始されるだろう。
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