幅広い製品ポートフォリオを持つ総合半導体ベンダの米フリースケール・セミコンダクタ。組み込み市場の3本柱である自動車、通信機器、携帯電話を押さえる総合力を生かし、コンシューマ機器へも攻勢を掛けようとしている。
米モトローラの半導体部門が2004年に分離独立したフリースケール・セミコンダクタ(以下フリースケール)は、いまでは数少ない、幅広い分野のデバイスを垂直統合で手掛ける総合型の半導体ベンダである(注)。同社は、モトローラが半世紀以上にわたって半導体分野で築き上げた膨大なIP(知的財産)を受け継いでいる。プロセッサ関係だけでも、「HC08」をはじめとする8/16bit MCU製品。PC黎明期を支えた「68000(68K)」が発展した組み込み向け32bit MPU「ColdFire」。同じくPC向けMPUとして出発した「PowerPC」も、通信プロセッサ「PowerQUICC」や車載向け32bit MCUのMPUコアとして適用範囲を広げている。
売上高が約58億ドル(2005年実績)で、半導体ベンダランキング(米iSuppli調査)10位に位置するフリースケールは、主に3つのアプリケーション分野
にフォーカスした事業構成を取る。自動車はその中でも特に大きな収益源となっており、車載用半導体ではトップシェアであるという。ネットワーク機器では、通信プロセッサのPowerQUICCやRF(無線周波)パワーアンプが携帯電話基地局など通信機器で多用され、モバイル機器では携帯電話機向けベースバンド・プロセッサやアプリケーション・プロセッサ、RFなどに強みを持つ。
フリースケールの地域別売上高を見ると日本は5%だが、日本市場の重要性はやはり高いという。日本法人で技術本部 本部長を務める友部昭夫氏は「世界の自動車産業で日本勢がシェアを伸ばしている。また、世界でも3GケータイやFTTHが最も進んでおり、フリースケールが得意とする分野の半導体ニーズが高い」と話す。
だが国内に限れば、電機メーカー系の半導体ベンダが牙城を保っている。特に自動車や携帯電話、通信機器は、どの国内ベンダにとっても譲れない最重要分野。フリースケールは、どう深く切り込んでゆくのか。それに対して友部氏は、「われわれのようにデジタル、アナログ、通信など幅広い技術領域を押さえ、何種類ものプロセス技術に力を入れる半導体ベンダはそう多くないだろう」と自信を見せる。
フリースケールは実際、プロセッサの集積度を高めるCMOSだけでなく、デジタル回路とアナログ回路を1つのチップに混載するミックスドシグナル向けに「SMARTMOS」と呼ぶ独自プロセス技術を持つ。250nm(ナノメートル)加工を実用化しており、2008年からは130nmの採用が始まる。最近の組み込みシステムでは、部品点数を減らすためミックスドシグナルの需要が高まっており、SMARTMOSが生きてくる。そのほかMEMS(micro electro mechanical systems)加工技術(注1)を用いた加速度センサ、圧力センサ、非接触検知の電界センサ(注2)も得意とする。主に自動車で使われてきた各種のMEMSセンサだが、最近は携帯電話や家電でもニーズが高まっている。
半導体ベンダというとプロセッサ技術に注目が集まりがちだが、組み込みシステムはプロセッサだけで成り立つわけではない。ユーザーのニーズに合わせてデバイスやプロセス技術を最適に組み合わせた“ソリューション”を提供できるのが総合型半導体ベンダの強み。フリースケールは、その強みを前面に打ち出している。
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