東京大学生産技術研究所は、南極海のリュツォホルム湾とトッテン氷河沖において、AUVの「MONACA」による無索での海氷下航行に成功した。両海域で無索による往復航行を1回ずつ実施し、最大200mの往復航行に成功している。
東京大学生産技術研究所は2025年6月26日、南極海のリュツォホルム湾とトッテン氷河沖で、AUV(Autonomous Underwater Vehicle)「MONACA(モナカ)」のケーブル非接続(無索)での海氷下航行に成功したと発表した。両海域における無索運用は、世界初になるという。
MONACAは、海氷や棚氷の奥深くへ潜入し、氷の裏面の形状を高精度に計測する自律型海中ロボットだ。全長2.1m、空中重量235kgで、最大潜航深度は1500m、動作時間は8時間、氷の裏側へ最大10km潜入できる。マルチビームソーナーやDVL(ドップラー式対地速度計)、INS(慣性航法装置)を備えたセンサーユニット、音響測位装置、氷や母船に対する相対ナビゲーションアルゴリズムを搭載している。
研究グループは、2022年度の第64次南極地域観測で南極海でのAUV運用を実施したが、無索での運用はできず、母船周辺での運用にとどまったという。その結果を踏まえてMONACAの性能向上を図り、運用方法も再検討して2024年度の第66次南極地域観測を実施した。
第66次観測では、リュツォホルム湾において6日間で8回、合計約11kmの航行で映像や海流、水質などのデータを得た。トッテン氷河沖でも4日間で2回、合計約1.5kmの航行を実施した。両海域で無索による往復航行を1回ずつ実施しており、最大200mの航行に成功した。
海中では信頼性の高い無線通信手段がないため、予期しなかった事態が発生しても安全に戻れる自律航行アルゴリズムが必要となる。今回、無索運用に成功したことで、観測が困難な棚氷の裏側の探査が現実的な目標となってきた。
今後は、同実験で得られた各種センサーデータを基に自律航行アルゴリズムの性能向上を図り、より長距離の運用を目指す。氷床質量変化や海洋との相互作用の理解が深まることで、地球における南極の役割の解明や地球全体の環境変動予測の高精度化に貢献する。
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