宇宙以上に未知の領域だとされる海の世界だが、ロボティクスやIoTなどの技術進歩により新たに海洋探査や測定などが盛り上がりを見せようとしている。しかし、こうした「海で使う機器」の開発には、特有のノウハウが必要になり、実際に試験を行うのも大きな負担になる。こうした「海で使う機器」の試験や、海洋計測機器の開発を行うのがOKIグループのOKIシーテックである。OKIシーテックの取り組みについて新たに代表取締役社長に就任した中井敏久氏に話を聞いた。
宇宙以上に未知の領域だとされる海の世界だが、ロボティクスやIoTなどの技術進歩により新たに海洋探査や測定などが盛り上がりを見せようとしている。しかし、こうした「海で使う機器」の開発には、特有のノウハウが必要になり、実際に試験を行うのも大きな負担になる。こうした「海で使う機器」の試験や、海洋計測機器の開発を行うのがOKIグループのOKIシーテックである。OKIシーテックの取り組みについて新たに代表取締役社長に就任した中井敏久氏に話を聞いた。
OKIシーテックはOKIの海洋計測事業を取りまとめる形で1987年に設立された。静岡県沼津市の内浦湾に面する位置に立地。計測用バージや試験用船舶、無響水槽、専用桟橋などを保有し、実際の海を利用したさまざまな試験が行えるということが特徴となっている。
中井氏はOKIシーテックの強みとして立地する内浦湾が海洋試験環境として最適である点を訴える。「内浦湾は四季を通して海面が穏やかである上、急激に深くなる海岸であるためそれほど遠くまで船を出さなくても水深が必要な試験を行える。水深1000m以上の海域も非常に近い。また、海底がフラットなエリアもあり、試験結果が安定しているため机上シミュレーション結果と実験結果の比較が容易である利点がある」(中井氏)。
これらの試験設備を生かして防衛省関連や大学、造船企業などの研究開発用の試験を行うというのがOKIシーテックの事業の中心だが、最近では大学の研究機関やベンチャー企業などから“水中ドローン”とも呼ばれるAUV(自律型水中ビークル)関連の試験を持ち込まれることも増えているという。「AUVによる海洋探査は大きな期待を集めている分野ではあるが、海洋試験を行うには試験場も必要になる他、海で使うための独自のノウハウも必要になる。それらの環境と試験のコンサルテーションなども行えるためにAUV関連の試験を依頼されることは増えている」と中井氏は語る。
これらの試験受託の他、ノウハウをパッケージ化した独自製品なども開発している。湖底や海底に超音波を打って深さを測る「マルチビーム測深機」や、これを小型化しラジコンボートに搭載した「可搬ボート型マルチビーム測深機」、AUVなどに搭載する「音響通信測位装置」などである。この中では「可搬ボート型マルチビーム測深機は、集中豪雨の後などですぐに深さを測る用途で使われるケースが増えている。豪雨で川底やダム底に土砂がたまると、貯水能力などが変わるケースが出ているが、それを測ってその後の対策を行うというケースだ」と中井氏は語る。また、AUVの開発が増える中で音響通信測位装置も引き合いは増えているという。「位置測定は陸上だとGPSなどで行うが海中だと電波が減衰するために届かない場合が出てくる。そこで海中では超音波を使うが、その超音波を使って測位をしたり通信をしたりするデバイスだ」(中井氏)
市場動向としては「海洋資源開発や洋上風力発電など、政府などの後押しも含め『海を使う』動きが活発化している。これらに利用できる機器開発を積極的に支援していきたい」(中井氏)。まずは実際の海を使った試験環境があるという利点を生かし「メーカーや研究機関の研究開発とのリンクを強めていきたい。また、音響通信測位装置を含めた独自の音響を使った測位、通信、センシングを強みとして提案していく。独自製品としては、測深機を積極的に提案していきたい」と中井氏は述べている。
さらに、OKIグループで推進する海洋IoTソリューションについても「今後は成長する」(中井氏)と期待を寄せる。養殖事業者向けの海洋環境センシングや、密猟者の監視など、さまざまな用途での利用に向け実証などが進んでいるという。「内浦湾でも実際に水温センサーなどを設置して漁業協同組合などに提供するような取り組みも進めている」(中井氏)。
「日本は海で囲まれた国であり、海洋活用は考えていかなければならないことだと考えている。現状では海洋系の機器開発は市場が小さいが、洋上風力発電などを含め徐々に活用の幅は広がっており、今後はさらに増えてくると考えている。そういう動きを捉えていきたい」と中井氏は語っている。
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