海洋研究開発機構(JAMSTEC)と情報通信研究機構(NICT)は、世界で初めて、高速衛星通信を用いた陸上からの無人探査機遠隔操作(テレオペレーション)試験に成功した。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)と情報通信研究機構(NICT)は2013年10月17日、世界で初めて、高速衛星通信を用いた陸上からの無人探査機遠隔操作(テレオペレーション)試験に成功したことを発表した。
同試験が行われたのは同年10月6日のこと。超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)が提供する衛星通信リンクを用い、陸上(JAMSTEC横須賀本部)から相模湾初島沖水深約130mに潜航中の無人探査機「おとひめ」のテレオペレーションを実現した。試験では、陸上からの遠隔操作とともに、おとひめが撮影した高精細な深海映像や各観測機器・センサーの計測結果を、リアルタイムに陸上へ送信できたことを確認。“海のブロードバンド(高速・大容量の通信回線や通信環境)化”にとって重要な一歩を踏み出すことに成功した。
海洋観測で得られるデータは、資源探査や環境・気候変動、地震・津波災害など、日本が抱えるさまざまな課題解決に役立てることができる。そのため、観測精度の向上や観測範囲の拡大を図り、大規模かつリアルタイムな情報収集が求められている。しかし、現状では、汎用性が低く伝送速度も限定的なブロードバンドサービスしか提供されていない。そこで、JAMSTECとNICTは共同で、宇宙(衛星)を介し、海上から深海までをカバーするリアルタイムな海のブロードバンド化について検討を開始した。
今回、JAMSTECの石橋正二郎技術研究副主幹らのグループとNICTによる共同研究チームは、きずなが提供する超高速の衛星通信リンクを船上に確立するために、アンテナの高精度な初期捕捉・衛星トラッキング(追尾)を実現するシステムと、負荷分散や自己復旧能力を有する新開発のネットワーク技術で構成された、おとひめ制御システムを開発した。これらシステムを用い、陸上での通信試験・結合試験や各種検討などを繰り返してきたが、このたび、実機を用いた海域試験を実施。高速衛星通信による無人探査機テレオペレーションを実現した。
この成功は、衛星を介したブロードバンド技術に対する新たな可能性をもたらすものであり、今後さらに進捗させることで、海底資源探査や海底地形調査の高度化、効率化に大きく貢献できるという。
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