東京大学は、半導体チップの放熱効率を高める3次元マイクロ流路構造の水冷システムを開発した。圧力損失は従来比で62%低減し、1平方センチメートル当たり700W以上の熱処理能力を達成した。
東京大学は2025年4月14日、半導体チップの放熱効率を高める3次元マイクロ流路構造の水冷システムを開発したと発表した。AI(人工知能)技術向けの高性能半導体チップの冷却で必要となる、消費電力の削減につながることが期待される。
同技術は、毛細管現象を利用して冷却水の薄膜にチップに接触させるキャピラリー構造と、水の流れを分配するマニホールド構造を組み合わせた。この構造によって注入する冷却水と熱い排水を分離しつつ、半導体チップの熱を効率よく運び出す。
開発した冷却システムは、マイクロ流路を形成した基板と、冷却水を分配するマニホールド構造を持つ基板の2枚のシリコン基板で構成する。マイクロ流路の側壁付近にある微細な柱がキャピラリー構造として機能し、熱を吸収した水の一部が蒸気に代わることで、気化熱によってチップから熱を奪う。水蒸気は主にマイクロ流路の中央部を伝わり、マニホールド構造の出口から排出する。
9個のマニホールド構造を備えた設計では、従来の冷却方法と比べて圧力損失が62%低減し、1cm2当たり700W以上の熱処理能力を達成した。また、冷却効率を表す性能係数が10万を超え、世界最高レベルの冷却効率を実証した。
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