アルミ底板で電池モジュールの放熱性能を2倍に、東芝の「SCiB」が新製品電動化

東芝は、負極にチタン酸リチウムを採用する独自のリチウムイオン電池「SCiB」において、底板にアルミニウムを採用することで放熱性能を従来比約2倍に高めた電池モジュールの新製品を開発したと発表した。

» 2025年04月09日 06時30分 公開
[MONOist]

 東芝は2025年4月8日、負極にチタン酸リチウムを採用する独自のリチウムイオン電池「SCiB」において、底板にアルミニウムを採用することで放熱性能を従来比約2倍に高めた電池モジュールの新製品を開発したと発表した。EV(電気自動車)バスや電動船、定置用蓄電池などに向け、同月中旬以降順次、国内外で販売を始める。

SCiBの電池モジュールの新製品 SCiBの電池モジュールの新製品。底板にアルミニウムを採用し放熱性能を向上した[クリックで拡大] 出所:東芝

 SCiBは、負極にチタン酸リチウムを採用することで、「安全性」「長寿命」「低温性能」「急速充電」「高入出力」「広い実効SOC(State of Charge)レンジ」などが特徴となっている。スズキのマイルドハイブリッド車の他、EVバス、クレーン車、鉄道、物流拠点で使用されるAGV(無人搬送車)などで利用されている。また、電池パックやセルでの販売に加えて、必要な電圧や容量を得るために直列や並列での組み合わせが可能なモジュール製品も販売している。

 今回発表したモジュールの新製品は、短時間での連続高入出力と寿命の維持の両立を求めるニーズに対応するため、東芝として初めて底板にアルミニウムを採用。放熱性を約2倍に向上した。アルミニウムは、これまで使用してきた樹脂素材と比べると熱抵抗が低く熱を逃しやすい。その一方でアルミニウムには導電性があるため、底板は電池セルとの絶縁を保つ仕組みが必要になる。

 東芝は、電池セルと底板を接合する接着剤を熱伝導性接着材に変更するとともに独自の新構造を採用することで耐電圧性能を確保。放熱性能を示す熱抵抗(小さいほど放熱性能が高い)は、底板に樹脂素材を用いる従来品が0.7K/Wであるのに対し、底板にアルミニウムを用いる新製品は約0.4K/Wとなった。顧客は電池冷却システムを変更することなく、SCiBの電池モジュールを放熱性能が約2倍になった新製品に置き換えることで、電池の寿命を大幅に延ばせるようになる。

SCiBの電池モジュールの従来品と新製品の比較 SCiBの電池モジュールの従来品と新製品の比較[クリックで拡大] 出所:東芝

 新製品は23Ahセル2並列12直列(計24セル)構成で、名称は「2P12Sモジュール Type4-23」である。定格容量は45Ah(1242Wh)、公称電圧は27.6V、使用周囲温度範囲は-30~50℃。外形寸法は幅203.8×奥行き395×高さ134.2mm、重量は16.5kg。

 リチウムイオン電池が幅広い用途で活用される中、EVバスや電動船における急速充電や運行に応じた充放電、定置用途における電力負荷平準化を想定した充放電など、電池の使い方の多様化が進み、短時間でより高い電力を連続して入出力することが求めらている。一方で、短時間で高い電力を連続して入出力すると、リチウムイオン電池に熱が発生して寿命が短くなる。短時間での連続高入出力を実現しながら、いかに放熱し電池の寿命を維持するかがリチウムイオン電池の課題となっている。今回のSCiB電池モジュールの新製品は、SCiBの電池セル単体での特徴である短時間での連続高入出力性能を生かしつつ、電池モジュール側で高い放熱性能によって電池寿命を維持できるようにして課題に対応している。

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