低炭素燃料のバイフューエルでシリーズHEV、複雑なシステムで技術を磨く人とくるまのテクノロジー展2025

HKSは「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」において、バイフューエルのシリーズハイブリッド車の取り組みを発表した。カーボンニュートラル燃料(液体/気体)の効率的な使いこなしと電動化の両方をにらんだ研究開発用の車両だ。

» 2025年06月16日 07時15分 公開
[齊藤由希MONOist]

 エッチ・ケー・エス(HKS)は「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」(2025年5月21~23日、パシフィコ横浜)において、バイフューエルのシリーズハイブリッド車の取り組みを発表した。カーボンニュートラル燃料(液体/気体)の効率的な使いこなしと電動化の両方をにらんだ研究開発用の車両だが、「バイフューエルシリーズハイブリッドシステム」としての商品化も視野に開発を進めていく。

 市販のエンジン車(非ハイブリッド)をベースに、気体燃料に対応し電動パワートレインを追加した。エンジンと、プロペラシャフト以降の駆動系は純正品を使用している。純正のATが搭載されていた場所には、発電用と駆動用のモーターを設置した。エンジンは発電専用で、脱炭素化に向けたサステナブルチューニングを施している。

カーボンニュートラル燃料(液体/気体)の効率的な使いこなしと電動化の両方をにらんだバイフューエルのシリーズハイブリッド車[クリックで拡大] 出所:HKS

 純正の燃料タンクに加えて、車両中央の床下に追加したバッテリーと、車両後方の床下に配置したCNGタンクをエネルギー源として利用する。既存の給油口とガス充填口、急速充電と普通充電が可能な充電口を備える。移動中は燃料を使用し、現地でバッテリーの電力を使うなど柔軟に使い分けられるため、災害時などの電源供給車としても活用できる。荷物を積むスペースも確保されている。

 エンジンは気体燃料と液体燃料を使い分けながら発電用モーターを駆動する。出力が必要な始動時や加速時、出力がそれほど要求されない巡行時など、場面に合わせて燃料を自動で切り替える。エンジンで発電した電力はバッテリーへの充電や駆動用モーターの動力源に充てる。エネルギー回生も含めた協調制御となるため「非常に複雑」(HKSの説明員)だという。

バイフューエルのシリーズハイブリッド車に使用するギアボックスも自社開発[クリックで拡大]

 HKSのバイフューエルシステムはLPガスとガソリンを併用するタクシー専用車での受注実績があり、CNG(天然ガス)でもノウハウがある。その経験を生かして液体/気体のカーボンニュートラル燃料に対応していく。液体燃料としてはバイオエタノールやアンモニア混合燃料、レース用に開発中の「HKS CN Fuel」を、気体燃料は水素やメタン、CNG、LPガスを想定している。カーボンニュートラル燃料はガソリンと性質が異なるため、エンジンは燃料噴射や着火の設定を変えなければならない。効率よくカーボンニュートラル燃料を使うには検討が必要な段階だという。

 バイフューエルシリーズハイブリッドシステムとしてコストダウンしながら商品化を目指すだけでなく、シリーズハイブリッドシステムのエンジン以外の部分をEV(電気自動車)向けユニットとして展開することも考えている。カーボンニュートラル燃料への対応はエンジン単体でも取り組んでいる。複雑な制御を克服できれば、エンジンと、それ以外のEVに近い部分のどちらも強みにできると見込む。

 駆動用モーターと発電用モーターのそれぞれに必要なギアボックス、発電エンジン用のマフラー、DC-DCコンバーターや車載充電器といった必要な部品の搭載、ハーネスでの接続に加えて、燃料切り替え用のコントロールユニットやバッテリーモニタリングシステムの開発、試験走行用の暫定的なバッテリーパックの組み立てなどが完了し、走行に必要なものは準備済み。ギアボックスのギアも自前で設計、開発、生産した。今後、走行試験を実施していく。

バッテリーモニタリングシステムはEVトラックで経験を積んだ[クリックで拡大]

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